2011 Fiscal Year Research-status Report
ネオジム化合物に現れる強力な非幾何学的フラストレーション効果の解明
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23740265
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
綿貫 竜太 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究教員 (30396808)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 4f電子系 / フラストレーション / 多極子 |
Research Abstract |
常磁性状態における非容易軸方向成分(ab 面内成分) が高温で独立に秩序化している特異な部分成分磁気秩序を示すNdB4について、23年度は以下のような研究成果を得た。FZ法による単結晶育成を行い、従来以上に非常に大型でかつ純良な単結晶の育成に成功した。この新たに育成した大型単結晶を用いて超音波計測による弾性定数測定を行った。測定モードは横波のC44, C66 縦波のC33である。その中で、C44が13%近くの大きなソフトニングを示し、II相においてソフトニングがより大きくなる特異な挙動を観測した。このC44モードの既約表現は、結晶構造から見た場合のD4h対称性下のEg(Γ5+)であり、四極子の{Oyz, Ozx}、双極子の{Jx, Jy}もまた同じ既約表現に属する。群論的解析および、C44がII相でハード化せず上凸でソフト化している挙動から、4f電子軌道の四極子{Oyz, Ozx}とそれと同じ対称性の磁気双極子{Jx, Jy}も常磁性状態に近いような、揺らいでいることを明らかにした。また、これらの結果から磁気モーメントが、II相においてab面内で長距離秩序を示した場合には起こりえないことを示した。さらに、粉末中性子回折でII相に現れた磁気ブラックピーク群が、ab面内成分の磁気秩序によるものではない可能性を示し、II相における秩序変数が磁気双極子ではない高次の多極子である可能性を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度はほぼ申請時の研究計画通りに遂行できている。研究計画にあるが、実績として挙げていないものも、研究に着手はして結果が出つつある。具体的にはNdB4のパルス強磁場下での磁化測定は、実験を行ったところサンプルが純良な金属であるために誘導渦電流の影響が無視できないレベルで現れており、これを解決するために試料を薄くする加工を施している最中である。また、平均場計算は結果が出つつあり、可変パラメータの解釈を進めているところである。ただし、中性子回折実験については東日本大震災により東海村の原研の研究用原子炉が停止してしまったため、実験を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、23年度とほぼ同じペースで、NdB4のII相における秩序変数の決定を中心課題として研究を推進していくつもりである。また、NdB4での研究手法を直接的に活かすことで、NdCu2Ge2およびNdCu2Si2の部分成分磁気秩序についても研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度以降は設備備品を新調する予定もなく研究を推進することができるため、研究費の支出は消耗品を主とし、他に研究成果発表等の旅費と論文投稿に掛かる支出に研究費を使用する予定である。
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