2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740271
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三宅 厚志 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 特任助教 (10397763)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 固体酸素 / 温度圧力相図 / 交流比熱 / 交流磁化率 / 圧力 |
Research Abstract |
もっとも単純な等核二原子分子である酸素分子はスピン角運動量1の3重項基底状態をとり、磁性と結晶構造が密接に関わった複雑な温度圧力相図を示す。過去にX線回折、分光実験等により10 GPa以下で結晶構造の異なるα、β、γ、δ、εの5つの固相が報告されているが、相境界の統一見解は得られていない。また、磁気相境界も完全には明らかでない。本研究では比熱、磁化率等の熱力学量から相図の解明、各相での物性を明らかにすることが目的である。本年度は1. 酸素を圧力装置に封入する方法の確立、2. 圧力下交流比熱測定により熱力学的に酸素の相境界を明らかにすることを目標とした。1. 酸素の封入技術の確立 助燃性である酸素を液体窒素トラップで液化し、ダイヤモンドアンビル型高圧力発生装置(DAC)の試料室内に安全かつ簡便に封入する方法を確立した。室温で加圧していくと、6 GPa付近で液体-β相転移に伴い酸素分子が結晶化する様子、加圧に伴い赤褐色になることを観測した。2. 酸素の圧力下交流比熱測定 DACの試料室内に熱電対、ヒーターをとりつけた白金箔を入れ、液体酸素を封入した。白金試料の交流比熱を測定することで、周りにある酸素の比熱も同時に測定することが可能であると考えた。電極類と電気的に絶縁したガスケットに直径0.3mmの穴を開け、試料室とした。ヒーターに加える交流電流の波形を工夫することで高感度な測定を可能にし、降温に従い液相-γ相、γ相-β相、β相-α相転移に伴う比熱異常を明確に捉えることができた。また、前者2相転移に関して明確な温度履歴を観測し、一次相転移であるという過去の報告とも合致した。圧力下での酸素の比熱測定は本研究が初である。現在のところ2GPaまでの測定が完了し、過去の報告とよく一致する相図が得られた。より高圧力下での測定を行うことで酸素の相図を結論することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ダイヤモンドアンビルセルへの酸素封入技術の確立と交流比熱測定から酸素の圧力温度相図作成を計画していた。前者に関しては、予定通り達成している。20 GPaまでに固体酸素はα、β、γ、δ、εの5つの固相を取ることが報告されている。交流比熱測定では、ヒーターへの交流電流の波形を工夫することで、高精度な測定が可能となり、液相-γ相、γ相-β相、β相-α相転移に伴う比熱異常を予想以上に明確に捉えることが出来た。δ、ε相が現れる圧力域までの測定には至らなかったが、より高圧力下での交流比熱測定は現在進行中であることより、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
酸素の圧力下交流比熱、磁化率測定を行い、磁気相図の作成を行う。結晶構造を元に相図が提案されてきたが、最終的な結論には達していない。また、磁気的相境界も明らかではない。 現在進展中である交流比熱測定をより高圧力下で行う。特に実験によって異なる結果が報告されているβ-δ相境界を明らかにしたい。また、中性子回折実験からδ相は反強磁性相で温度変化によって相内で磁気構造転移が報告されている。圧力下交流比熱測定から熱力学的に相境界、相転移の有無を明らかにする。また、極低温領域までの測定を行い、酸素の新相探索も行う。 試料空間に微小コイルを入れることで、圧力下交流磁化率測定を行う。酸素分子は磁性と結晶構造が密接に関わっている。比熱測定では両者の相転移に伴う異常から相境界を明らかにすることが可能である。さらに磁化率で磁気的相境界を明らかにする。 また、酸素はその分子軸に自由度があり、それらが磁性、結晶構造へ大きく影響していると考えられる。複素比熱測定技術を開発し、各相の安定性に関する分子のダイナミクスを明らかにしたい。 これらの結果を酸素の相図の最終結論としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、測定の高感度化と温度、圧力の精密制御により酸素の相図を詳細に決定する。測定の高感度化には試料空間をなるべく大きくすること、測定系のノイズを減少させる必要がある。酸素の高い圧縮率と絶縁体粉末で形成される試料室がもろいために、加圧により試料室が著しく変形する。絶縁ガスケットの材料、試料空間の形状の最適化により加圧による変形を軽減させる。ノイズを減少させるために測定系と試料との配線を同軸ケーブルに交換し、測定の高感度化を行う。 酸素分子はその温度、圧力変化の過程によって、相境界が異なるという指摘があり、精密に制御する必要がある。低温でも圧力制御できるように圧力装置を改良し、圧力の精密な制御を行う。導入予定の温度コントローラと圧力装置の改良により、温度、圧力を詳細に制御し、酸素のより正確な温度圧力相図を決定する。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] 価数揺動2012
Author(s)
三宅厚志
Organizer
YbCu2Ge2の圧力誘起重い電子状態
Place of Presentation
関西学院大学 西宮上ケ原キャンパス
Year and Date
2012年3月24日~27日
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