2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740271
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三宅 厚志 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 特任助教 (10397763)
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Keywords | 固体酸素 / 圧力温度相図 / 交流比熱測定 / 交流磁化率測定 / 共振周波数測定 |
Research Abstract |
等核二原子分子である酸素分子はスピン角運動量1の3重項基底状態をとり、10 GPa、室温以下で磁性と結晶構造が異なるα、β、γ、δ、εの5つの固相が存在する複雑な温度圧力相図を持つ。過去に分光実験により上記5相以外の相境界も報告されているが統一見解は得られていない。本年度は前年度の交流比熱測定をより高圧力域で行い、磁化率測定から磁気的相境界を求めることを目的とした。具体的には1. 圧力下交流比熱測定、2. 圧力下交流磁化率測定、3.共振周波数測定による磁化率測定を行い、5 GPa、室温以下での酸素の温度圧力相図を明らかにした。 1. 酸素が封入されたDACの試料室内に配置した白金試料の交流比熱を測定することで、酸素のα、β、γ、液相間の相転移に伴う比熱異常を明確に捉えることができた。さらに、3 GPa付近でγ相内に相転移に伴う比熱異常を観測し、今までに報告のない相が存在することを発見した。しかし、圧力発生部である絶縁ガスケットの変形により、5 GPa以上での測定が困難であった。過去の報告にあるα相内での相転移は5 GPa以下では観測できていない。 2. 直径0.4 mm、高さ0.1 mm程度の圧力室内に10巻きの二次(ピックアップ)コイルを入れ、ガスケット周りに交流磁場を発生させる一次コイルを巻き、高圧力下磁化率測定を行った。しかし、相転移を観測することが出来なかった。感度が十分でないことが考えられる。 3.自己共振LC回路中のインダクタンスコイル内に試料を挿入し、試料の磁化率を共振周波数として測定する方法を開発した。インダクタンスコイルとして圧力室内の二次コイルを使用した。α-β相転移を共振周波数の明確な変化として捉えることに成功した。本測定からもα相内の相転移を確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度までの圧力下交流比熱測定に加えて、圧力下磁化率測定より相線決定を目指した。交流比熱測定では圧力発生部である金属ガスケットの絶縁部の変形することで5 GPa以上での測定が困難であった。磁化率測定ではガスケットの絶縁方法を改良し、加圧に伴う試料室の変形が抑えられ、より高い圧力発生が可能となった。しかし、感度が不十分なため、交流磁化率測定からは相転移を捉えることが出来なかった。それに替わる方法として、交流磁化率測定と同じセッティングで共振周波数測定による磁化率測定方法を開発した。交流磁化率では観測できなかったβ-α相転移に伴う反強磁性転移を明確に観測することに成功した。 測定圧力範囲が目標とした10 GPaには届かなかったが、当初の計画になかった圧力下共振周波数測定方法が確立し高精度で磁化率測定が可能となったこと、ガスケットの改良を行い、より高い圧力発生方法の方針が立ったことで次年度の研究発展に繋がると判断し、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、交流比熱、共振周波数測定による磁化率の測定を行ってきた。5 GPaまでの測定を行い過去に報告と良く致する温度圧力相図を熱力学的に確認できた。さらに交流比熱測定によって今までに報告のないγ相内に新たな相転移を発見した。しかし、圧力が温度変化するため、比熱や磁化率の温度依存性の測定後、別の装置を用いて圧力の温度依存性を求めた。そのために圧力の不確かさが残る。 今後は交流比熱等の測定と同時に圧力の測定を行えるようにして、より正確な相境界を決定する。本年度で改良したセッティング方法で5 GPa以上での交流比熱、磁化率測定を行う。特に実験によって異なる相境界が提案されているβ-δ相境界、中性子回折実験により報告されたδ相内での磁気構造相転移を比熱、磁化率測定により明らかにする。また、本年度発見したγ相内での相転移が磁気的なものであるかを磁化率測定から明らかにする。以上の結果を酸素の温度圧力相図の最終結論としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ガスケットの改良により、室温での10 GPaの圧力発生方法の方針が立った。しかし、圧力が温度変化するために圧力の不確かさが残る。そこで、比熱や磁化率の温度依存性の測定と同時に圧力の測定を行う測定系を構築する。低温で圧力マーカであるルビー蛍光を測定できるようにプローブの改良を行う。プローブ内に光ファイバーを導入し、分光器、可視光レーザーを室温に配置する。これら光学系の構築に研究費を使用する。 相境界で温度、圧力を決定する事でより正確な温度圧力相図を完成させる。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Field-induced Phenomena in Ferromagnetic Superconductors UCoGe and URhGe2012
Author(s)
D. Aoki, M. Taupin, C. Paulsen, F. Hardy, V. Taufour, H. Kotegawa, E. Hassinger, L. Malone, T. D. Matsuda, A. Miyake, I. Sheikin, W. Knafo, G. Knebel, L. Howald, J.-P. Brison, J. Flouquet
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Journal Title
Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 81
Pages: SB002-1-6
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Superconducting and Martensitic Transitions of V3Si and Nb3Sn under High Pressure2012
Author(s)
S. Tanaka, Handoko, A. Miyake, T. Kagayama, K. Shimizu, A.E Bohmer, P. Burger, F. Hardy, C. Meingast, H. Tsutsumi, Y. Onuki
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Journal Title
Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 81
Pages: SB026-1-4
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] The Novel Phase Diagram of YbPd2012
Author(s)
A. Miyake, T. Kagayama, K. Shimizu, T. Ebihara
Organizer
Japan-French Workshop on Correlated Electronic Systems “Colloquium in honor of Prof. Kazumasa Miyake
Place of Presentation
ラウエ-ランジュバン研究所(フランス、グルノーブル)
Year and Date
20120903-20120905
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