2011 Fiscal Year Research-status Report
パルス強磁場中電子輸送現象測定による鉄系超伝導体の量子化磁束の研究
Project/Area Number |
23740272
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木田 孝則 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 助教 (50452412)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | パルス強磁場 / 高温超伝導体 / ネルンスト効果 / 量子化磁束 |
Research Abstract |
本研究では,鉄系超伝導体の量子化磁束の振る舞いについて熱磁気効果(特にネルンスト効果)測定の手法を用いてアプローチするためにパルス強磁場中熱磁気効果測定装置を開発することを目的としている。ネルンスト電圧は磁場と垂直方向に温度勾配をつけた際に生じる起電力であるので,本研究で開発する熱磁気効果測定装置の核は,パルス強磁場中での正確な温度計測にあるといえる。特に導体試料では,パルス磁場発生に伴う渦電流により試料が発熱する可能性があるため,試料形状を工夫して渦電流の影響を極力小さくして,且つ測定中の温度勾配を一定に保つ必要がある。本年度は(1)測定用プローブの作製,(2)測定システムの構築を中心に実施した。測定用プローブの先端部分は,熱浴となる熱伝導率の良いサファイア基板,試料をマウントするエポキシ樹脂およびでヒーターとなる小型のフィルム上ストレインゲージで構成される。温度勾配は極低温用熱電対を用いて計測する予定であるが,適切な熱電対の入手が困難であったため,現在のところその導入には至っていない。パルス磁場の測定には,サファイア基板付近に取り付けたピックアップコイルを用いて行い,50テスラまでの正確な磁場測定を可能にした。測定システムは,本年度購入したスコープコーダ DL850(横河メータ&インスツルメント社製),ローノイズ電圧アンプ(シグナルリカバリー社製)および既設の測定機器を組み合わせ,GP-IBを介した測定プログラムを作成した。この測定システムを用いて,熱輸送現象の測定には至っていないが,半金属のビスマスを用いたパルス磁場中電気抵抗測定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パルス磁場中での温度計測に低温用熱電対を用いることを計画していたが,その入手が困難であったため測定装置の完成には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
熱電対の代わりに小型の抵抗温度計(Cernox)を取り付け温度計測の問題を解決した上で,まずは磁場中で大きな熱起電力変化が観測される熱電変換材料の1つであるBi-Sb合金を用いて,パルス強磁場中での温度計測技術を確立させる。その後,ランタン系あるいはビスマス系の銅酸化物超伝導体を用いてネルンスト効果を測定し,既に報告されている結果と比較することでパルス強磁場中熱磁気効果測定技術の確立にフィードバックさせる。さらに鉄系超伝導体について同測定を実施し,量子化磁束の運動を考慮した鉄系超伝導体の磁場-温度相図の完成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
クライオスタット製作のための各種材料およびガラスデュワーの購入費用として20万円を計上している。また,武漢(中国)で開催されるRHMF2012および韓国で開催されるICM2012の国際会議での旅費・研究成果発表費用として30万円を計上している。その他,国内会議・研究打ち合わせの旅費に10万円,研究成果を学術論文として発表するための投稿及び別刷り代として10万円を計上している。
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