2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740273
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩瀬 文達 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (30512868)
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Keywords | 新奇超伝導 / トポロジカル超伝導 / トポロジカル絶縁体 / NMR |
Research Abstract |
平成24年度は強いスピン-軌道相互作用を持つ超伝導体Ir1-xPtxTe2に着目し、その超伝導特性におけるトポロジカルな側面に関する研究した。超伝導ボリュームの高い純良な粉末多結晶Ir1-xPtxTe2を用い、x=0.05の超伝導ギャップ構造とクーパーペアの対称性を明らかにする目的で125Te NMRを行った。超伝導臨界磁場Hc2が~0.17 Tと非常に低いため、極めて低い外部磁場下(0.05 T)の特殊環境で実験を行った。 Tc=2.4 K (0.05 T)以下で125Te NMRスペクトルの半値幅が急激な増大を示し、NMRによる超伝導転移を確認することができた。また、1/T1はTc以下で指数関数的に減少しており、超伝導のギャップはフルギャップ(等方的)であることが明らかである。続いてナイトシフトKの温度依存性を見てみよう。スペクトルのピーク位置はTcまわりで変化がない。緑の曲線はBCSすなわちスピンシングレットの場合のものであるが、これと一致しない。BCSならばナイトシフトの軌道項(K-kaiプロットから0.028%)に漸近するはずである。KがTcまわりで変化しないのは、スピントリプレットの特徴である。 これらの結果を総合すると奇パリティの超伝導が実現している可能性があることがわかった。この結果は、空間反転対称性が保たれた超伝導がトポロジカル超伝導となるために満たす条件の一つと一致し、この物質がトポロジカル超伝導である可能性が高まった。純良なIr1-xPtxTe2においてはじめてこの条件を満たすことが明らかになり、この原因が強いスピン-軌道相互作用という共通の物理に基づくもので、大変興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はトポロジカル超伝導と目される物質の超伝導対称性を明らかにすることを目的として研究を行った。そこで強いスピン-軌道相互作用を持つ超伝導体Ir1-xPtxTe2に新たに着目し新奇超伝導探索を行った。この物質は極めて低い上部臨界磁場をもつため超伝導状態を調べるためには低磁場・極低温の実験が必要になる。そこで新たな希釈冷凍機を導入し、40mKまでの極低温状態を実現することが可能とした。さらに極低周波数のNMR信号を観測し、今回はじめて超伝導状態に迫ることができた。 その結果、スピントリプレットかつフルギャップのp+ip超伝導の可能性を強く示唆する実験結果を、世界に先駆けて明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は奇パリティ超伝導の可能性を支持する結果を得る目的の実験を行う。そのために単結晶試料を用いてNMRスペクトルの角度依存性を調べ、多結晶試料では不十分であった情報を得る。この実験によってトリプレットを強く支持する結果を得ることができる。 新たなトポロジカル転移が有機スピン液体物質において観測されており、幾何学的フラストレーションに基づいたスピン系における新規電子状態の研究に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は試料を回転するための角度回転プローブを製作し、制御プログラムを構成する計画である。低温実験を引き続き行うため寒剤を要する。また多結晶試料に関するこれまでの成果を論文として発表する予定である。高圧下実験を行う計画であり、圧力セルを購入する必要がある。これらの必要経費を請求する。
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