2011 Fiscal Year Research-status Report
変分モンテカルロ法によるf電子系の価数揺らぎと有効質量の研究
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23740282
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
久保 勝規 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究員 (50391272)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 重い電子系 / 価数揺らぎ / 強相関電子系 / 物性理論 / 超伝導 |
Research Abstract |
伝導電子とf電子間のクーロン相互作用Ucfを取り入れた拡張周期アンダーソンモデルについて、Ucfがf軌道の価数や有効質量に与える効果を調べた。手法としては、重い電子状態の記述に適しているグッツヴィラー近似法を、軌道間の相互作用を取り扱えるように拡張し、このモデルに適用した。その結果、中間的な価数の領域で有効質量がUcfの効果によって増大することがわかった。これは、Ucfによるエネルギーの増加を避けるために、伝導電子とf電子が異なるサイトを占めようとして、動きにくくなるためである。この効果によってUcfが大きい場合にはf準位を変化させたときに、価数は単調に変化するが、有効質量は非単調に変化することがわかった。 これは、これまでの理論では説明することが困難であったCeCu2Si2の圧力下での価数と有効質量の変化を、定性的に説明する。CeCu2Si2では、圧力下で価数は単調に減少するが、有効質量は非単調に変化することが知られていた。本研究結果は、価数が単調に減少する場合でも、Ucfが大きければ有効質量は非単調に変化することを示している。そして、これはUcfがCeCu2Si2で比較的大きくなっていることを示唆しており、この物質に対して提案されている、価数揺らぎによる超伝導の実現の可能性を議論する上でも重要である。 また、この研究結果は有効質量の増大にf電子間の相互作用だけでなく、伝導電子とf電子間の相互作用Ucfも効く場合があり、定性的に異なる影響をもたらし得ることを示しており、重い電子状態の新しい形成機構としての意義もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グッツヴィラー近似法を、価数揺らぎが大きくなりうるモデルに対して適用できるように拡張することに成功した。そして、この手法によって有効質量の特異な振る舞いを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
グッツヴィラー近似法を、さらに拡張して、外部パラメータによってf軌道の価数や有効質量にどのような影響を与えるかを調べる。特に次年度では重い電子状態が磁場によってどのように壊されていくか、そのときに磁化や価数がどのように変化するかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は物品費を若干押さえることが出来たので、次年度に使用することにした。次年度は今年度よりも長期の海外出張が予定されているため、次年度の研究費と合わせて使用する。また、計算機を購入する予定である。
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Research Products
(7 results)