2011 Fiscal Year Research-status Report
非平衡系におけるスピン波スピン流に対する数値的研究
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23740284
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
大江 純一郎 東邦大学, 理学部, 講師 (40510251)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スピントロニクス |
Research Abstract |
本研究では、熱勾配によって駆動される強磁性絶縁体中のスピン波について解析を行った。これはスピンゼーベック効果と呼ばれ注目が集まっている。このスピンゼーベック効果を解析するために、強磁性体中の磁化の運動に注目した。具体的には磁化の運動を表すLandau-Lifshitz-Gilbert (LLG)方程式を、温度勾配を有する系において数値的に解き、そこからプラチナ電極に入射されるスピン流を議論した。プラチナ電極を考えるのは、逆スピンホール効果を用いて、スピン流を観測可能な電圧に変換するためである。まず、スピン拡散方程式とLLG方程式を組み合わせることにより、電極と強磁性体の界面を流れるスピン流を解析的に解き、次に数値解析で得られた磁化の運動を用いることで実際に観測される電圧を求めた。その結果、ミリメートルスケールの範囲で電気信号が現れることを初めて理論的に示した。この研究結果をPhys. Rev. Bに投稿し掲載された。また、研究結果について、仙台で行われた応用物理学会磁気学会共催のスピントロニクス研究会において招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
強磁性絶縁体中のスピン波スピン流の解析を行なっているが、現在までにイットリウム鉄ガーネットというモット絶縁体中のスピン波の解析が可能になった。熱交配によって駆動されるスピン波の計算を大規模な系で行うことが可能になった。ミリメートルスケールで実験と理論が一致することは稀であり、本研究が非常によく物理現象を捉えていることを示している。また、スピンゼーベック効果の信号の緩和機構が、2種類あることも明らかになった。このことにより理想的なスピントロニクスデバイスの材料設計が可能になる。このことは申請時には考えられなかったことであり、予想以上の成果である。この申請課題について、開始1年目にもかかわらず、すでに招待講演を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
スピンゼーベック効果の高効率化を目標にし、物質定数をパラメータとして物質探索を行う。そのためには今のプログラムを更に大規模なものにするため、計算機クラスタを用いた並列化計算を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
50万円程度の計算機クラスタの増設を行う。研究成果を国際学会(中国、イタリア)で発表するため旅費を使用する。国内学会や、実験グループと議論を行うために旅費を使用する。
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