2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740287
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 宙志 東京大学, 物性研究所, 助教 (50377777)
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Keywords | 多重気泡生成過程 / Ostwald成長 / 分子動力学法 / 大規模計算 |
Research Abstract |
数万コアを超えるような大規模計算機において実用的に利用できる短距離分子動力学シミュレーションコードを開発し、多重気泡生成過程の研究を行った。疑似flat-MPI法を採用することで、ハイブリッド並列の省メモリという利点と、flat-MPIのチューニングのし易さという利点を同時に享受できるよう工夫した。ベンチマークとして東京大学情報基盤センターFX10にて最大で4800ノード、384億粒子の計算を実行し、193 TFLOPSの性能(ピーク性能比17%)を達成した。1ノードを基準とした場合の4800ノード実行における並列化効率は96%と、計算規模を考えれば極めて良好であった。flat-MPIの場合と、ハイブリット実行を行った場合の比較も行い、flat-MPI実行の方が計算速度は早く、スケーリングも安定的であるが、ハイブリッド実行の方が省メモリであることがわかった。 開発したコードを用いて、14億粒子を用いた多重気泡生成シミュレーションを行った。純粋な液相に平衡化した後、急減圧を行う事で多数の気泡が生成され、その気泡の相互作用によりOstwald成長が観測された。これは、少なくとも二階層にわたるマルチスケール構造が、ミクロなモデルから直接計算できたことを意味する。また、数億粒子を超える計算を行うと気泡の数も1万を超えるため、気泡分布関数の時間発展を十分な精度で追うことができる。これにより、ミクロな相互作用から推定した分布関数の時間発展と直接比較することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに行った気液相図の精密測定、界面張力の精密測定といった平衡状態の性質を踏まえ、今年度は多重気泡生成過程という非平衡状態の研究を行った。多重気泡生成過程の全粒子計算を行うためには、最低でも1億粒子を超える計算を行う必要があり、そのためには数万を超えるCPUコアを利用する、超並列計算が必須となる。今年度はそのような超並列計算機においてベンチマークのみならず、実用的にプロダクトランを行うことができるコードを開発し、多重気泡生成過程の分布関数の時間発展を十分な精度で得ることに成功した。これにより、気泡間相互作用の直接推定が可能となった。 本研究の研究対象である気液混相流の全粒子計算の達成に向け、シミュレーションコードの開発は今年度でほぼ終了した。また、昨年度の平衡状態の解析から、今年度の多重気泡生成過程という非平衡状態の解析に進んだことにより、流動と相転移のカップルした系の解析が現実化した。以上から、現在までの研究の進行はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
多重気泡生成過程における気泡分布関数の時間発展の解析を行う。特に、気泡間相互作用を過程したスモルコフスキー方程式の数値計算結果と比較することで、気泡間相互作用を直接推定する。また、小規模な系において、気泡と流動の相互作用を研究し、相間摩擦など、相界面を介した輸送現象について調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内外の学会参加、および計算資源購入、論文出版費用に充てる。
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