2012 Fiscal Year Annual Research Report
個体・集団レベルの生命現象における能動的揺らぎと応答の関係
Project/Area Number |
23740290
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
村山 能宏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60334249)
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Keywords | 揺らぎ / 応答 / ボルボックス / 走光性 |
Research Abstract |
個体・集団レベルの生命現象を物理的に解明するためには,生命現象特有の“揺らぎ”と外力に対する“応答”の関係を明らかにすることが不可欠である。そこで本研究では,水溶液中を自発的に運動するボルボックス個体を能動的粒子とみなし,個体・集団レベルの生命現象を理解するためのプロトタイプとなり得るモデル実験系を構築した。ボルボックスが有する走光性を利用し,生物個体・集団が示す能動的揺らぎと応答の関係を解明することが,本研究の目的である。 前年度の結果を踏まえ,光刺激を加えた時のボルボックス集団の速度変化から易動度(応答関数)を求め,刺激なしのときの揺らぎと比較した結果,速度揺らぎの大きい集団ほど光刺激に対する応答が大きいことが分かった。また,測定結果に基づき,ボルボックス集団の応答と揺らぎおよび両者の関係を表す実験式を得ることに成功した。 本研究は,微生物が示す能動的揺らぎと応答を系統的に測定し両者の関係を示した最初の例といえる。本研究により,ボルボックス集団は,荷電ブラウン粒子系と極めて類似した性質と明らかに異なる性質を併せ持つことが分かった。これらの成果は,能動的粒子系に潜む普遍性を探る上で,本研究で構築した系が優れたプロトタイプとなり得ることを示している。今後は,本研究で得られた実験式の物理的および生物的意味の解明や,適応現象などについて研究を進める必要がある。本研究を発展させることで,“能動的粒子系の統計力学”が構築できれば,“温度差で生じる熱流”や“化学ポテンシャルの差で生じる物質流”という考え方を,生物個体や集団の動きはもとより,生態系や社会の動きに対しても応用できる可能性がある。
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