2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740298
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
桂 法称 学習院大学, 理学部, 准教授 (80534594)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 物性基礎論 / 数理物理 / 記号計算 |
Research Abstract |
強相関電子系に対して、対称性などの代数的な観点からアプローチし研究を行った。本年度の成果としては、以下の4つに関するものが挙げられる。(1)一次元量子臨界系のサイン二乗変形, (2)二次元量子系のエンタングルメントと共形場理論, (3)強磁性絶縁体におけるマグノンの熱Hall効果, (4)量子スピン鎖におけるRaman散乱。これらの中で、特に(1),(2)に関してその意義とともに説明する。(1)先行研究において、一次元量子臨界系の局所Hamiltonianにサイン二乗変形と呼ばれる変調をかけた場合の基底状態と一様系の基底状態が非常に良く一致することが数値的に確認されていたが、これを解析的に調べその理由を明らかにした。具体的には、自由フェルミオン系(XYスピン鎖、横磁場Ising鎖)の場合に上の対応関係の厳密な証明を与えた。また、連続極限において、サイン二乗変形されたHamiltonianとVirasoro代数の生成子との関係を明らかにした。この関係は数値計算においてサイン二乗変形を用いることの妥当性を保証する点で重要である。また二次元以上への一般化も議論した。(2)量子多体系のエンタングルメントを特徴付けるものとして、近年注目されているエンタングルメント・スペクトル(ES)に関する研究を行った。具体的には、二次元のギャップのある量子系(i)AKLT模型, (ii)量子Hall系, のESを調べた。(i)については、ESが全く別の系である一次元Heisenbergスピン鎖の準位構造を反映しているという予想(VBS/CFT予想)を得た。(ii)については整数/分数量子Hall系のESは、系の端状態に対応する共形場理論における石橋状態によって説明できることを示した。(i)(ii)ともに、二次元のギャップのある系と一次元の臨界系との非自明な対応関係を明らかにしたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Mathematicaなどを用いた数式・記号処理を用いて強相関電子系の問題にアプローチすることを当初の目的のひとつとしていた。実際にMathematicaを用いた少数系の厳密計算や数値的対角化により、サイン二乗変形した系の基底状態が厳密に求まる場合を発見し、その対応関係を示すことができた。このような思いがけない発見は、通常の数値的・解析的な計算を独立に行うだけでは不可能であり、当初の目的以上の成果があったと考えられる。また二次元量子系のエンタングルメントのような解析的なアプローチの難しい問題に対しても、可解模型とモンテカルロ計算を組み合わせたアプローチや共形場理論の知識を活用したアプローチを開発することにより、定量的と呼べるレベルの解析を行うことができたことも、当初の目標以上の成果があったと考えられる。本研究の主軸のひとつである、低エネルギー有効Hamiltonianの研究に関しても、強磁性絶縁体におけるマグノンの熱Hall効果の研究において、有効スピンHamiltonianの性質とその対称性が、熱Hall効果の有無と極めて重要な関係があることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は2つの大きなテーマ、1.低エネルギー有効Hamiltonian、2.高い対称性を有する格子模型、に対して代数的にアプローチすることを目的としている。テーマ1については、近年冷却原子系において注目されているRydberg原子系に対して、低エネルギーHamiltonianとその臨界性などを調べることを進めていきたい。また、この系におけるエンタングルメントや古典統計力学系との対応関係などを調べる。またRydberg原子系におけるエニオン励起のような新奇粒子やトポロジカル相の実現可能性を模索したい。テーマ2については、次の2つテーマに対する解析を行う(i)SU(n) Hubbard模型, (ii)超対称性のある格子模型。(i)については、近年冷却原子系において、高い内部自由度を持つHubbard模型の実現がなされているが、それらを念頭にこの系の磁性や種々の物性を調べることを目指す。また、(ii)については、超対称性を持つ格子上の多体系を構成しその基底状態や準位構造を調べる。また、コホモロジーやヤンギアン代数のような現代的な数学とこの多体量子系との関係を明らかにすることを目指す。テーマ1と2は一見独立のように見えるが、これらは代数的な観点から多体量子系にアプローチするという共通点を持っており、2つを有機的に結び付けることにより非自明な結果が得られることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では特に有効Hamiltonianの導出や模型の代数的な性質を調べるのに、解析的な手法と数式処理システムとを組み合わせる必要がある。当該年度にMathematicaを購入したが、次年度も関連する新しいPCソフト(10から20万程度)の購入を予定している。その他に物品費として、先行研究に関する資料を集めるために書籍費を想定している。(当該年度所要額のうちの次年度使用額(4,214円)は、端数として残ったものであり、こちらは翌年度に書籍等を購入する目的に使用する予定である。)本研究は海外研究者との共同研究を多く計画している。次年度も海外研究者を訪問することを予定している。また得られた研究成果をまとめ、国内・海外の学会・研究会において発表を行うため、国内旅費・海外旅費が必要である。また国内外の共同研究者の講演・短期滞在に対して人件費・謝金を用いることを計画している。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] Thermal Hall effect of magnons2011
Author(s)
桂 法称
Organizer
International Discussion Meeting on Thermoelectrics and Related Functional Materials(招待講演)
Place of Presentation
Aalto University, Helsinki (Finland)
Year and Date
2011年6月15日
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