2011 Fiscal Year Research-status Report
多価イオン照射による固体表面ナノ構造生成過程の研究
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23740306
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
大橋 隼人 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 研究員 (60596659)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 多価イオン衝突 / 固体表面 |
Research Abstract |
磁気ボトルを用いた飛行時間型エネルギー分析器は,詳しいシミュレーション計算を行った結果,広角度放出される電子の捕集可能な放出電子エネルギーの上限が想定よりも低いことが判明した。広角度に放出される高エネルギー電子は捕集できないものとして,放出角度を限定したデータとして解析することにする。多価イオン照射による固体表面ナノ微細構造について,高配向性グラファイト(HOPG)を標的固体として,50~75価の多価Biイオンを照射した際に生成されるナノ微細構造の直径及び形状を調べる測定を行った。過去の報告では,50価程度ではHillock構造,73価ではクレーター状の衝突痕観測されており,その中間を補う目的の実験であったが,価数が大きくなるにつれナノ微細構造の直径は単調増加していき,形状の変化は70価と75価の間で起きていることを示唆する結果が得られた。詳細については現在解析中である。HOPG固体表面への多価イオン照射時に生成されるナノ微細構造の大きさは,イオンの価数に比例するという報告例があり,今回の結果はそれを支持するものであったが,ポテンシャルエネルギーの差による寄与を検証する為,50価の多価Iイオン照射による実験も行った。ポテンシャルエネルギーが50keV,100keVと倍違うにも関わらず,両者のナノ構造の直径は誤差の範囲内で一致した。多価Iイオン照射時の方が値は大きく,誤差が大きい為に一致してしまっている可能性もあるので,誤差を小さくする測定を行うことが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の主装置である走査型トンネル顕微鏡(STM)の不具合で,長期間にわたり固体表面観測を行うことが出来なかった。また,別件で約二ヵ月間海外の研究室に滞在したことも少なからず影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
走査型トンネル顕微鏡は他研究室から移設予定であり,正常に動作すれば固体表面観測を行うことは可能になる。これに伴い移設する装置に適した測定系を構築する必要があるので,もう一度シミュレーション計算を行い,装置開発及び調整を行う。固体表面からの広角度放出電子の高エネルギー成分の捕集には区切りを付け,放出X線のエネルギー分析,固体表面のナノ構造変化の観測,磁場による影響についての研究に重点を置く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に作製出来なかった飛行時間型エネルギー分析器の開発,移設された走査型トンネル顕微鏡用の各装置の開発及び改良にその費用の大半を使用する。固体標的用試料や実験に伴う寒剤購入。調子の悪いスクロールポンプが故障した際には,その修理費用としても使用する。
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