2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23740309
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
新倉 弘倫 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (10500598)
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Keywords | 高強度レーザー / トンネルイオン化 / 金属ナノチップ / イオン化ダイナミックス / 超短レーザーパルス |
Research Abstract |
金属のナノ先端に超短レーザーパルスを照射したときに生じるイオン化過程と電子波束生成過程について研究することを目的としている。まずイオン化過程により生成した電子の運動エネルギーを測定するため飛行時間差型電子分光器を作成した。また金属ナノチップを保持し、真空チャンバー内でその位置を調整する保持装置を作成した。これらの装置系を使用し、先端が20nm径のタングステンチップを試料として以下の実験を行った。(1) パルス幅35fsのレーザーパルスを照射し、レーザー強度の関数として光電子スペクトを測定した。光電子の測定方向は、タングステンチップの先端方向とは垂直に設定した。光電子スペクトルには気相分子からの光電子スペクトルと同様なとびとびの構造が現れ、照射する強度の増大とともにエネルギーの大きい方に全体がシフトすることが観測された。(2)レーザーパルスを5.5fsまで圧縮したパルスを用いた場合、35fsパルスを用いたときよりも、より高いエネルギーを持つ光電子スペクトルを観測した。スペクトルが連続状態に近づくことから、レーザー1パルスに付き2回程度、光電子が放出されていることがわかった。(3)35fsのパルスを2つに分け光電子放出のダイナミックスを測定した。初めに光電子を放出しない程度の強度のパルスをチップに照射し、次に時間差をおいてプローブパルスを照射した。時間差の関数として放出された光電子スペクトルの強度変化を測定したところ、光電子はポンプパルスによる励起直後にはその放出量がいったん減るが、そののちに大きく増大しピークを形成することがわかった。これはチップ内部の電子ダイナミックスを反映していると考えらる。以上の結果について論文を作成中である。
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