2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740313
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
柳町 真也 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (70358216)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | セシウム原子 / ラマン遷移 / セシウム原子時計 |
Research Abstract |
本研究は、原子泉方式を適用しセシウム原子のラマン遷移を分光することで、現用の高安定実用原子時計(水素メーザー等)の周波数安定度を超える原子時計の実現を主目的としている。 装置の開発に当たって、本開発の重要な要素となるセシウム原子D2線のラマン遷移の観測から着手した。周波数安定度を劣化させるノイズ要因を見極め、得られた知見を装置の設計に反映させるため、一次周波数標準器として利用しているNMIJ-F1を用いて予備実験を行った。ラマン遷移を励起するために必要な2週波は電気光学変調器の搬送波と側帯波を用いた。原子の打ち上げ方向と平行にラマン遷移励起レーザーを照射し、相互作用時間0.4秒でスペクトルを観測した結果、約1.8Hzの半値全幅をもつ蛍光信号を観測した。また、ラマン遷移励起レーザーの照射を時分割することでラムゼーフリンジを観測することができた。その際、原子の打ち上げとラマン遷移励起レーザーの照射タイミングのジッターが一次ドップラーシフトにより周波数シフトを誘引することがわかり、本装置作製のための重要な参考データが得られた。このことからラマン遷移励起レーザーの照射方向は原子の運動と垂直が最適であるとの結論を導いた。 次に、電気光学変調器に付加するマイクロ波の変調指数とラマン遷移励起レーザーの総合パワーの2つをパラメータとして、時計遷移のACシュタルク効果が打ち消される条件を探った。時計遷移の周波数が照射レーザーの光強度に依存しない条件として変調パワーが-0.3dBmから-1.0dBmの間にあることがわかった。以上の結果は次年度以降の装置開発の基礎データとして用いられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備データを取得するための装置(NMIJ-F1)の予定外のオーバーホールを行ったため、予定していたデータを取得することができなかった。そのため、本装置にある程度の汎用性を組み入れた設計が必要となり、時間を要した。一方で、予備データ取得により、光学系のセットアップが完了し、本装置の実験を遂行するために十分な機能を有していることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
予備測定の結果を踏まえ、本装置の組み立て、実験を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本装置の設計に時間を要したため年度を越えた物品の購入となった。本装置組み立ての部品は一通りそろったので、漸次、実験を進めていく。
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