2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740319
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩下 靖孝 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50552494)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ソフトマターの物理 / コロイド |
Research Abstract |
我々は近年注目が高まっている異方性コロイド粒子系の中で、「両親媒性コロイド粒子分散系」における凝集構造の形成及びその機構の解明を目的とし、研究を行なっている。特に本研究では、このような系は熱揺動での平衡化が困難であるため、強い非熱的揺動(超音波)を加えることにより平衡構造の形成を目指している。 平成23年度においては、粒子の作成及びそれらを用いた構造形成に関し大きな進展が見られた:(i)購入した装置を用いることで、金属蒸着による両親媒性ヤヌス粒子の作成及びGlancing Angle Deposition法によるヤヌス形状の制御に成功した。後者は当初計画以上の進展である。またチオール化合物を用いた表面処理により、両親媒性の度合いを制御する手法も確立できた。(ii)ピッカリングエマルションを用いた両親媒性ヤヌス粒子の作成に成功した。こちらはコロイド粒子の一部をマスクし、それ以外の部分をシランカップリング剤で化学処理する手法である。蒸着とは異なる物性を付与できることも確認した。(iii)(i)の粒子を用い、水-油-両親媒性粒子3成分系に超音波印加することにより、界面活性剤分子系と同様の凝集構造を形成することに成功した。形成された凝集塊(クラスター)やエマルションの構造がヤヌス形状を反映していること、及び球状エマルションの体積・表面積比が理想的な界面活性剤挙動のものに対応することが分かった。 このように、研究に必要な粒子の作成手法を確立することが出来た。また両親媒性ヤヌス粒子の理想的な界面活性剤挙動を、本研究により初めて示すことが出来た。本成果に関しては、現在論文準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、研究に必要な両親媒性コロイド粒子の作成手法を確立することが出来た:研究計画にあった、真空蒸着による金属被覆ヤヌス粒子の作成及び各種チオール化合物による表面物性の制御に成功した。また粒子の半面ではなく一部分のみを被覆した、非対称なヤヌス粒子の作製にも成功した。後者は当初計画以上の進展であった。また当初計画のマイクロ流路を用いた作成法ではなく、溶融ワックスにより粒子の一部をマスクし、露出部分をシランカップリング処理することによるヤヌス粒子作成手法にも取り組み、こちらにも成功した。この手法はより純粋に表面の化学的性質を制御でき、表面物性制御の自由度が高まった。 またこのように作成した粒子を用い、超音波印加による凝集構造形成に関し一定の新規な成果を得ることにも成功した。通常の両親媒性分子系の物理的挙動との比較から、両親媒性ヤヌス粒子特有の興味深い凝集構造形成が明らかとなった。 以上のように、当初計画からの多少の変更もあったが、研究に必要な手法の確立、およびそれを用いた実験ともに概ね計画通りかそれ以上の進展が見られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは順調に研究が進展しており、基本的には当初計画の方向にそって研究を進めていく予定である:特に試料作製手法は平成23年度にほぼ確立できたので、構造形成の研究に注力する。具体的には、平成23年度に主に研究した対称ヤヌス構造を持つ粒子の凝集構造に加え、非対称ヤヌス粒子を用いた場合の研究を推進する。また粒径分散の及ぼす影響など、異なる粒子の混合系における構造形成の研究も進める。以上によりヤヌス構造・粒子サイズ・サイズ分散・両親媒性と構造形成の関係を解明し、最終的には「両親媒性コロイド粒子分散系」の構造形成機構全般の理解に繋げて行きたい。 ヤヌス粒子の作成に関しても、高分子被覆などのまだ試していない質的に異なる表面処理が存在する。これらは必ずしも当初計画には含まれていないが、それ以上の進展を図るため積極的に取り組んで行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な使途は、試料などの消耗品費、学会出張費である:試料として、シリカ・ポリスチレンなどの様々なコロイド粒子や、それらの表面処理のためのチオール・シランカップリング剤・蛍光色素、各種溶媒などを購入する。またガラスセル・キャピラリーなどの消耗品も購入する。 参加する学会としては、日本物理学会、IACIS 2012(International Association of Colloid and Interface Scientists, Conference)などを予定している。
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Research Products
(6 results)