2012 Fiscal Year Annual Research Report
トラックエッチング膜とナノビーズによるラチェット膜および交流駆動電気浸透流ポンプ
Project/Area Number |
23740320
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
奥村 泰志 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (50448073)
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Keywords | 電気浸透流ポンプ / トラックエッチド膜 / 非対称散逸系 / ゼータ電位 / 交流駆動 / 流動電位 |
Research Abstract |
近年、マイクロポンプの需要が高まっているが、一般的な機械式マイクロポンプでは、低コスト化と小型化に限界がある。電気浸透流ポンプは、水などの流体に浸した多孔質材料内部の固-液界面に生じた電気二重層に平行な直流電流を印加することで、カウンターイオンの泳動によって流体が移動する電気浸透流を駆動力とするため、可動部品を一切必要としない。しかし、溶媒の電気分解により溶液のpH変化やガス発生を伴う点が問題であった。 本研究では電気分解が生じない交流電流を高分子多孔質材料に印加した際に生じる溶液の往復運動を一方向に整流することで、電気分解の生じない交流駆動の電気浸透流ポンプの開発を試みた。多孔質材料として、膜厚細孔が円形で孔径が均一な多孔質高分子膜であるポリカーボネート製のトラックエッチド膜(TE膜)を用いた。この膜の両面に、マグネトロンスパッタにより膜裏表間の絶縁性を保ちながら金コートし、導電ゴム製Oリングで挟んで両面の金電極への導通を確保し、水中でTE膜に直流電場を印加した。その結果、電気浸透流の流量は電圧に比例し、電気浸透流の理論が定める最大流量に近い極めて理想的な値を示した。 次に、この膜に交流電流を印加したところ、本来は対称な系と考えられていたが、溶液が整流されて一方向へ流れ、交流電源駆動の電気浸透流ポンプとして機能することを見出した。TE膜は高分子膜に放射線を当て、その軌跡をエッチングしたものであり、本来裏表は無いと考えられていたが、非対称性の原因を探るため膜表面のゼータ電位を測定した結果、裏と表で約3mVの差を示すことを見出し、これが交流駆動の電気浸透流ポンプを実現していると考えられる。このポンプは駆動によるpH変化やガス発生を引き起こさないため、従来の電気浸透流ポンプの欠点を克服し、ディスポーザブルでろ過機能も有する、極めて薄く安価なポンプとして期待される。
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