2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740326
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷川 享行 北海道大学, 低温科学研究所, 研究員 (30422554)
|
Keywords | 衛星 / 数値シミュレーション / 流体計算 / 軌道計算 / 惑星 |
Research Abstract |
本研究における目的は、ガス惑星形成時に惑星周囲に存在し衛星系形成の母体となったと考えられている周惑星円盤の構造を明らかにし、衛星系形成過程の基礎を確立することである。その衛星系の材料物質は固体であるが、太陽系形成の母体である原始惑星系円盤において物質のほとんどは水素・ヘリウムなどの気体であり、固体の運動はその気体に大きな影響を受ける。そのため、この目的の遂行するための基盤的研究として、まず高解像度数値流体計算を行い、気体の密度・速度構造、すなわち原始惑星系円盤ガスが周惑星円盤へ降着する様子を詳細に理解することが必要である。平成23年度において、そのテーマについて詳細に研究を行い、周惑星円盤の形成過程について新たな知見を得た。本研究内容は、国際専門誌 Ast rophysical Journal へ投稿し、既に受理・掲載されている(Tanigawa, Ohtsuki, and Machida 2012, ApJ, 747, 47)。平成24年度においては、周惑星円盤ガスへガスがどのように捕獲されるかについて数値軌道シミュレーションを行った。その結果、中心面において粒子サイズが小さい極限(1ミリ程度以下)では粒子は周惑星円盤へ降着できず、サイズが大きくなるにつれて降着率が上昇し、メートルサイズで最大になり、キロメートルサイズを超えると再び降着率が減少することが明らかになった。その成果は現在投稿準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は主に、数値流体シミュレーションにより周惑星円盤ガスの構造の解明を行い、その成果を国際専門誌(Astrophysical Journal)に投稿し掲載されている(Tanigawa, Ohtsuki, and Machida 2012, ApJ, 747, 47)。平成24年度は主に、原始惑星系円盤から周惑星円盤に固体が突入してきたときにどのように捕獲されるかについて研究を行い、既に開発が進んでいた固体の運動をシミュレーションするための数値計算コードはを用いて研究を進め、その成果は現在、国際専門誌への論文投稿準備中である。このように、当初の予定からの遅れはそれほどなく、概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの2年間の本研究によって明らかになった周惑星円盤ガスの密度・速度構造、および固体粒子が周惑星円盤に捕獲されるプロセスを元に、周惑星円盤中において、衛星材料物質である固体粒子の構造(空間分布)を明らかにする。これは、これまで広く用いられてきた「復元円盤モデル」、すなわち現在の衛星系から原始衛星系円盤を推定した円盤モデルではなく、惑星系形成過程の中で自然に導かれる円盤モデルであり、この円盤モデルを元に衛星系形成を議論することで始めて現実的な衛星系形成過程を考えることが出来る。この新たな周惑星円盤モデルを元に、固体の合体成長率、円盤中の移動(落下)速度を求め、惑星系形成過程の中における自然な衛星系形成過程について議論する。さらに、現在の外惑星、特に木星・土星・天王星の衛星系の特徴を説明可能かどうかの検討を行う。説明困難な部分においては、近年提唱されている全く別な衛星形成モデル(惑星周りの重いリングからの衛星系形成、Crida and Charnoz 2012, Science, 338, 1196)の検討も行い、どの惑星の衛星系がいずれのモデルで形成されたかの検討し、問題点を整理する。この問題点を元に、惑星系形成過程まで遡って惑星形成過程における不定性を議論すると共に、衛星系を保持するガス惑星形成時期において原始惑星系円盤の状態に制約を与える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、研究打ち合わせや成果発表のための旅費として使用する。また論文投稿料にも使用する予定である。経費の削減により生じた未使用額の25年度での使用予定は、研究成果発表のための出張旅費に充てるつもりである。
|
Research Products
(7 results)