2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740327
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 希 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30400229)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 火山 / 短波長不均質構造 / 火山構造探査 / 波動 / 散乱 |
Research Abstract |
活火山浅部における短波長の構造不均質は,ダイク貫入や火道からの脱ガスといった火山性流体の挙動を支配するものであるが,その実態は解析手法の制約などによりいまだ明らかではない.そこで本研究では以下の高周波地震波を用いた解析・モデリングを行い,火山浅部における短波長不均質(確率論的構造)をイメージングすることを目的とする.初年度にあたる平成23年度には,これまで国内の主要な活火山において実施されてきた人工地震構造探査の稠密観測記録を用いて地震波エネルギー伝播の時空間分布を調べ,多重散乱モデルとのフィッテイングを通じてP波・S波間のモード変換・各モードの多重散乱を決定する散乱パラメータの定量化を行った.具体的には,浅間山における先行研究(Yamamoto and Sato, 2010, JGR)同様の手法を用いて阿蘇山・桜島・岩手山における観測記録を解析し,8-16Hz帯においてS波の平均自由行程が約1kmであり,またP-S変換が卓越することを明らかにした.これらの得られた結果は,通常の地殻に比べて短波長不均質性が2桁近く強いことを示し,火山構造・多様な火山現象の理解の新たな鍵となると考えられる.また,このような波動伝播の時空間分布に基づいて得られた散乱パラメータの妥当性の検証には,独立した手法によるP波/S波のエネルギー分配・エネルギー等分配の遷移過程などの観測的実証が必要である.そこで,2008年に桜島で実施した小規模3成分地震計アレイ観測の解析を進めるとともに,比較のために非火山地域においても同様の地震計アレイ観測を実施し,火山浅部の強い不均質構造によって地震波のモード変換が短時間で起こり,局所的なエネルギー等分配が短時間で成立することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北地方太平洋沖地震の影響のため,年度初頭においては若干の遅れ・研究内容の変更が生じたが,平成23年度に計画していた研究目的はおおむね達成し,順調に進展している.具体的には,複数の国内活火山における人工地震構造探査記録を用いて短波長不均質性の定量化を行うことができ,その妥当性の検証のため小規模地震計アレイを用いた解析を行い,独立した観測的実証を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度における観測データからの不均質性の推定にあたっては,主に多重等方散乱モデルを仮定し解析を行ったが,流体を含む亀裂が選択配向した場合などにこの仮定が妥当かは必ずしも自明ではない.また,先行研究においては活火山のような強い不均質場における波動伝播モデリングは十分には行われていないため,平成24年度には,3次元差分計算を用いた不均質媒質中における波動場の計算を行い,これまで用いられてきた理論モデルの適応妥当性・その限界について検討を行う.特に,数値計算結果と無限媒質における多重等方散乱モデル解析解との比較を通じて,散乱の非等方性の影響・地表面の効果を検討し,それらの周波数依存性について明らかにすることを目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の平成24年度の研究目的を達成するため,開発用ソフトウェアの購入などを行う.また,研究成果の発表・資料収集のために旅費を使用する.
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