2011 Fiscal Year Research-status Report
フェーズフィールド法を用いたコンドリュールメルト結晶化過程の理論的解明
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23740330
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 均 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50507910)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フェーズフィールド法 / Mg-Feオリビン / 偏析 / 初期トランジェント / 累帯構造 / 冷却速度 / 成長速度異方性 / 界面不安定 |
Research Abstract |
主に,Mg-Feオリビン(フォルステライトMg2SiO4とファヤライトFe2SiO4の固溶体)のフェーズフィールド計算コードの開発を行なった。偏析(元素分配)過程に注目し,以下の過程は取り扱わなかった:結晶化潜熱の解放(リカレッセンス,熱伝導による潜熱の排除)。取り組んだ課題は以下の通り;(i)初期凝固過程におけるオリビン内累帯構造の形成と冷却速度の関係,(ii)多次元計算に向けたオリビン各結晶面ごとの成長速度異方性モデルの検討,(iii)界面不安定によるオリビンバーの形成と冷却速度の関係。各課題について以下に述べる。(i)多成分系フェーズフィールド計算コードの開発の第一歩として,空間一次元問題(平坦界面の一方向凝固)を行なった。その結果,オリビン結晶内の化学組成勾配(初期トランジェント)と冷却速度の間に相関があることを見出し,組成勾配と冷却速度を関係付ける解析的表式を導出した。(ii)PBC理論によって理論的に得られているオリビン成長速度異方性をフェーズフィールド法に導入する手法を検討した。本研究で新しく導入された異方性関数により,結晶の成長形(kinetic Wulff shape)を再現できることが分かった。(iii)一方向凝固の空間二次元問題の計算を行ない,界面不安定によりリムからオリビンバーが生じる様子を再現した。バーの幅と冷却速度の関係を見出したことから,コンドリュール形成時の冷却速度を評価できる可能性がある。まとめ:初年度は,計算コストの問題により,コンドリュールメルト全体ではなく局所部分の計算に留め,凝固初期の基礎過程について研究を行なった。数値計算のコアとなる熱力学的・結晶学的モデルの作成は完了したため,今後は計算速度の向上,メルト全体計算が課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成項目:単なる数値計算法の開発だけではなく,それを通じて,初期凝固過程に関して新しい知見を得るに至った点は評価できる。これらはコンドリュールの分野のみならず,合金凝固の分野においても有用な知見である。オリビンの成長形を再現しうる新しい異方性関数を提案した意義は大きい。これにより,正多面体のような対称性の高い成長形のみならず,任意の成長形を持つ結晶のフェーズフィールド計算が可能となった。バーの幅と冷却速度の関係を導出した成果は,コンドリュール形成時の冷却速度を推測する上で極めて重要である。今回得られた局所部分の計算結果は,コンドリュールメルト全体を対象とした計算を行なう際の指標となる。未達成項目:凝固の熱的過程(結晶化潜熱の解放,熱伝導)は,現時点では計算コードに組み込んでいない。これは,局所計算においては,温度場の境界条件の設定が困難なためである。初年度で行なう予定だった多成分メルトの結晶化実験は実施しなかった。本実験は,数値計算との比較を行なう上で重要なテーマであるが,震災の影響もあり,実験装置の稼働に至らなかった。Websiteによる研究成果発表はまだ実現しておらず,現在準備中である。以上を踏まえると,理論的課題については順調に手法開発が進行し,成果が出始めているため,ほぼ予定通りの達成度であると言える。一方で,実験的課題の停滞については,震災の影響も落ち着いてきていることもあり,次年度以降に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
数値計算コードの開発を進める。特に,メルト一部分のみの局所計算ではなく,メルト全体の計算を実施する。潜熱の放出,非一様温度分布,及び,メルト表面における選択的蒸発による元素分配の効果をモデル化し,多成分系における棒状カンラン石凝固組織形成過程の研究を行なう。数値計算コードの高速化に取り組む。シングルCPU計算では,直径約50ミクロンの多成分メルトまでを解くことができる。これにより,地球大気突入時に溶融を経験した宇宙塵に観察される棒状カンラン石凝固組織の形成過程を調べることが可能である。GPGPU (General-purpose computing on graphics processing units)を用いて計算を高速化することにより,直径数100ミクロンの多成分系メルトを計算することが期待でき,コンドリュールへの適用が可能となるだろう。これにより,コンドリュールの棒状カンラン石凝固組織の形成過程を解明するとともに,コンドリュールと宇宙塵の凝固過程の関連について議論する。論文発表を行なう。前年度の3つの成果は,すでに論文執筆を進めている。完成次第,順次国際誌に投稿予定である。浮遊法を用いた溶融珪酸塩メルト結晶化実験を行なう。まずは単成分での実験を実施し,単成分系との比較を行なう。その後,Feを含めた多成分系の実験を実施するための準備(主に酸素分圧制御)を行なう。Websiteを整備し,研究成果発表を行なう。CSS(カスケーディング・スタイル・シート)を用いたwebsiteの原形は完成している。今後は,個々の成果について分かりやすく図解し,websiteへの掲載を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数値計算に関して。GPUマシンは導入済みのため,新たな設備備品の購入は不要。計算結果を保存するため,外付けハードディスク数台を購入する。結晶化実験について。実験装置は,研究協力者である塚本勝男教授が所有する「液滴浮遊加熱装置」を使用する。本装置による研究成果はすでに国際誌に発表されており,実験を行なう準備は整っている。実験試料,装置維持,改良に必要な物品などを購入する。また,実験の補助を行なう大学院生への謝金に使用する。研究協力者との研究打ち合わせ旅費,及び,関係学会参加旅費に使用する。また,学会参加登録費,論文英文校閲,論文別刷代に使用する。
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Research Products
(16 results)