2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740334
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桜庭 中 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50345261)
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Keywords | 地磁気西方移動 / 磁気流体波動 / 磁気不安定 / 地磁気ジャーク / 地球ダイナモ |
Research Abstract |
年度当初の研究計画では、実際の地磁気永年変化のデータを説明するために、マントル最下部の熱流量不均質や電気伝導度不均質をモデル化して、地球ダイナモの大規模数値シミュレーションを行うことにしていたが、すでにこれまでにも行ってきた大規模シミュレーションの結果を議論する上で、より基礎的な物理に基づいた現象の説明が重要であるとの認識に基づき、とくに地磁気西方移動に焦点をあてた基礎研究をおこなった。地球のコアをモデル化するために、回転する流体球を考え、そこに東西方向に周回する軸対称トロイダル磁場と、回転軸方向のポロイダル磁場を印加した。磁場強度が十分強いときには磁気不安定が起こるが、これを粘性ゼロの極限で線形解析した。その結果、印加したトロイダル磁場を球表面の赤道付近に局在させると、不安定を起こす臨界磁場強度が低下し、不安定モードの経度方向の波数が増え、さらに西向きの波の位相速度が増加することがわかった。これまでに得られたダイナモ数値シミュレーションの結果や、とくにインド洋からアフリカにかけての実際の地磁気変動にも、よく似た構造がみられることから、地磁気西方移動は、コア直下の強いトロイダル磁場の存在と密接に関係しており、電磁流体波動として解釈できるかもしれないことが示唆された。また西向き帯状流による移流の効果と対比するために、基本流も与えた線形解析もおこない、パラメータ・スタディをおこなった。この結果は、学会での発表のほか、現在学術誌に投稿しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大規模数値シミュレーションに関しては、海洋研究開発機構の地球シミュレータセンターでおこなう予定であったが、その共同利用プロジェクト内において計算時間を多く使えなかったことから、当初の計画どおりには進んでいない。しかしながら、これまでのシミュレーション結果や地磁気観測データを解釈するための、より基礎的な研究として、磁気流体波動についての線形解析をおこない、興味深い結果を得ることができた。これは、本研究課題の中の地磁気西方移動を説明する上で、多いに役立つ結果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、マントル最下部の熱流量不均質や電気伝導度不均質をモデル化した、地球ダイナモの大規模数値シミュレーションをおこなうことを予定する。計算には、海洋研究開発機構の地球シミュレータセンターを利用する。地磁気西方移動についてはこれまで比較的研究が進展してきたので、さらに地磁気ジャークの発生メカニズムについて、またそれと密接に関係すると考えられている、コアのねじれ振動について焦点をあてた研究を進める方針である。また境界条件の影響に加えて、より磁気レイノルズ数が大きく、かつ磁気エネルギー密度も大きいような系での磁場変動の振る舞いにも着目し、実際の地磁気変動の解釈に寄与したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究発表のための旅費と論文投稿料に使用する。
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Research Products
(3 results)