2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740341
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
望月 伸竜 熊本大学, 大学院先導機構, 特任助教 (60422549)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 古地磁気強度 / 放射性炭素年代 / 火山岩 / 宇宙線 / 地球磁場 / 阿蘇火山 |
Research Abstract |
過去数千年間の古地磁気強度の変動は、地球磁場の永年変化や地球表層への宇宙線入射量の変動を正しく把握する上で必要な基礎情報である。おもに欧州の考古学試料による古地磁気強度データは多数存在するが、明らかにばらつきが大きい(Yang et al., 2000)。ばらつきの原因は、精度の低いデータや系統的に偏ったデータであると推察され、平均値を計算するだけでは真の変動を抽出できていない可能性が高い。そこで、本研究では、噴出年代が放射性炭素年代によって報告されている火山岩だけを選んで、精度の良い新測定法を適用することで、日本における信頼度の高い過去6千年間の古地磁気強度変動を復元することをめざしている。本研究は、当初、阿蘇火山と九重火山を中心に研究を進める予定であったが、これらの火山に限定せず、放射性炭素年代が報告されている溶岩・火砕流を測定対象とする方針に改めた。本年度は、阿蘇火山・竹島において年代値のある火山岩のサンプリングを行った。船倉溶結凝灰岩(7300年前:喜界アカホヤテフラに対比される)については、古地磁気強度測定が完了し、信頼できる古地磁気強度データを得た。また、阿蘇火山においては、中岳溶岩(4000年前)・米塚溶岩(3300年前)の各2サイトにおいて試料を採取して、古地磁気方位測定を開始した。古地磁気強度測定の結果は、磁性鉱物に依存して大きな違いがあることが知られている。したがって、試料に含まれる磁性鉱物をキュリー温度に基いて把握することは、古地磁気強度測定の結果を正しく解釈する上で必要な基礎情報となっている。そこで、キュリー温度の測定に特化した高感度磁気天秤を購入し、調整を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、放射性炭素年代により噴出年代が報告されている火山岩3ユニットの採取を行った。そのうち、1ユニットの古地磁気強度測定が完了し、他の2ユニットの測定を進めている。効果的な野外調査を行うために、火山学分野の研究者と連携をとることにした。また、火山岩のキュリー温度を把握するための磁気天秤の導入もほぼ完了した。今後は、キュリー温度などの岩石磁気学的なデータに基いて、古地磁気強度測定に適した試料を優先的に測定することが可能になる。古地磁気強度測定法の見直しも行い、測定にかかる時間を3割程度短縮することにした。以上のことから、今後はより効率的に測定が進めることが可能な体制が整った。平成24年度は、火山岩5-6ユニットの採取・測定を進める予定であり、当初の研究目的の達成は可能と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
古地磁気強度測定に用いる火山岩の採取のためには、できるだけ新鮮な火山岩が採取できる露頭を複数見つけることが重要である。当初は自分たちで文献の情報を参考にして調査していたが、火山学の研究者に新鮮な露頭についての情報提供あるいは調査への同行を依頼することで、効果的な野外調査ができることが分かった。今後は、調査対象となる火山に詳しい火山研究者との連携しながら調査を行うことにする。平成24年度は、雲仙火山や鍋島岳にて、5ユニット程度の採取を行う予定である。雲仙火山の1ユニットについては、炭素年代が報告されていて、かつ、論文に本研究と同じ方法で得られた古地磁気強度データの報告がある(Yamamoto et al., 2010)ので、参照すればよいことがわかった。古地磁気強度測定法の見直しを行い、測定にかかる時間を以前に比べて3割程度短縮することにした。今後の測定はさらに効率的に行うことができる。以上により、平成24年度末までに合計9ユニット程度の古地磁気強度データを得ることで、当初の研究目的である、過去数千年間の古地磁気強度変動の復元を達成できる見込みである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
野外調査の旅費として200千円が必要である。成果発表のための国際学会旅費として300千円、国内学会旅費として100千円を計上する。古地磁気強度測定や岩石磁気学的測定に必要な消耗品として228千円が必要である。
|