2013 Fiscal Year Research-status Report
厳密な理論波形の作成によるマントル最下部低速度領域速度構造の推定
Project/Area Number |
23740345
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
藤 亜希子 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 技術研究副主任 (70587344)
|
Keywords | コア-マントル境界 |
Research Abstract |
本研究は、マントル最下部の極めて異常な構造を走時/波形の順解析により試行錯誤的に推定することを目指している。三次元の異常構造に対する理論波形の作成は膨大な計算資源を要するため、初めに三次元波線追跡法を用いて異常走時/波形を説明し得るモデル候補を絞り、限られたモデルに対して理論波形を作成することによって構造推定を試みている。 (1) 本課題の初年度に3次元波線追跡法のソフトウェアを作成した。しかし、10% 程度の局所的な低速度領域をもつ同じ構造モデルに対して、波線追跡法とCSEMで作成した理論波形から得られる走時異常の値に大きなズレが生じている。このズレの原因を調査する為に、まず最下部マントルに低速度層をもつ単純な球対称構造モデルをいくつか作成し、それらに対して一次元波線追跡法と理論波形の両方から理論走時を求めて比較した。10%の速度低下量を持つ厚さ50~150kmの低速度層モデルについて、二つの手法から得られる走時異常の値が良い相関を持つ為には、周期約6秒までの理論波形を計算する必要があることが分かった。 (2) パプアニューギニア付近で発生する深発地震を北アメリカの観測点で捉えた記録では、直達S波の振幅が標準的な球対称モデル(PREM)から予測される振幅の半分以下に減少している(To, 2011年日本地球惑星科学連合大会)。球対称モデルから作成した理論波形と観測波形の両方からスペクトログラムを作成し比較したところ、特に0.05-0.1Hzの周波数帯で振幅が小さくなっていることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
三次元波線追跡法により異常走時/波形を説明し得る構造モデル候補を絞る予定であった。しかし、波線追跡と理論波形により推測される走時に大きな不一致が見られるため、構造モデルを限定できていない。その為、当初の研究計画と比較して遂行が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
波線追跡法と理論波形から推測される走時異常が異なる原因を調査する。理論波形を計算する際に、時間ごとのスナップショットを作成しコア-マントル境界の激しい不均質を波が伝播する様子を記録する。その結果を、波線追跡の結果と比較し、二つの手法で理論走時が系統的にズレる原因を調査する。また、複数の周波数帯域で理論波形から走時を測定し、それらを波線追跡から得られる理論走時と比較することによって、ズレの原因を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に、コア-マントル境界に超低速度領域をもつ構造に対する3次元波線追跡を行うソフトウェアを開発した。同じ構造モデルに対して、波線追跡から予測される走時異常とCSEMにより作成した理論波形から予測される走時異常を比較した結果、大きな不一致が見られることが分かった。現在は、この不一致の原因を調査中であり、平成25年度予定していた共同研究者との打ち合わせを延期したため次年度使用額が生じた。 理論波形を計算する際に時間ごとの波動伝播のスナップショットを作成し、波線追跡の結果と比較することにより、二つの理論走時が一致しない原因を調査する予定である。スナップショットの作成方法について、CSEMの開発者と研究打ち合わせを行う。次年度使用額は、その為の旅費に充てる予定である。
|
Research Products
(3 results)