2011 Fiscal Year Research-status Report
段階式発生プロセス仮説検証による台風発生メカニズム全容の解明
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23740350
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
筆保 弘徳 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (00435843)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 台風発生 |
Research Abstract |
台風発生メカニズムの全容を解明することを目的とする本研究は、2つの研究方法で2つの課題を設定している。<課題1>全球非静力学モデルNICAMによる数値実験と、<課題2>回転水槽実験装置による室内実験<課題2>である。本年度は、<課題2>の回転水槽実験装置の整備とその実験実験に多くの時間と研究費を費やした。まず、これまで回転水槽実験装置の制御はPC98で行っており、もしそのPC98が故障すれば、代用品がなく、実験の継続が不可能になる危険があった。そのため、新しい技術での継続的な制御システムを構築する必要があり、システムの開発工事を行った。その整備が9月に終わると、カメラやPCソフト、専用コンピュータやデータストレージなど、実験結果を保存する研究環境を整えた。そして現在まで、研究代表者により回転水槽実験を継続的に行っている。<課題1>については、NICAMによる数値実験が、地球シミュレータを用いて完成された。現在は、本大学にそのシミュレーション結果が輸送されて、研究代表者により解析が進められている。このシミュレーション結果は15TBと非常に大きなデータ量のため、複数台のデータストレージを購入した。これまでのNICAMを用いた科研費受給者の研究により、1事例の台風発生メカニズムの仮説が立てられてきたが、今回の実験結果を解析することで、複数の台風事例で仮説が証明できる可能性が見えてきた。これらの室内実験や数値シミュレーションの初期的な結果を、2011年度の日本気象学会や日本地球惑星科学連合にて、研究発表をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
<課題1>のNICAMによる数値実験と、<課題2>の回転水槽実験装置による室内実験の研究は概ね順調である。しかし、<課題2>にある台風モデルTCM4の導入が遅れている。その原因は、既存の計算機用コンピュータの故障にある。本科研費申請時では、TCM4を計算させるための、最新で性能の高い大型コンピュータを購入する計画であった。しかし、要求研究費の減額により、既存の計算機コンピュータを用いて、TCM4モデルを導入していた。残念ながら、既存の計算機コンピュータは約6年前に購入したもので性能も低く、TCM4計算中にメモリーフローが起きるなどして、故障した。そのため今年度は、NICMA数値実験の解析と室内実験に研究時間をかけたが、次年度ではその対応策が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究費申請時の計画通り、今後は<課題2>の研究が中心となる。つまり、台風発生メカニズム仮説のStage 3の理想実験を行う。TCM4と回転水槽実験装置を用いて、仮説Stage 3の理想実験を行う。初期渦を与えて、理想的な環境場内で起きる2次循環をTCM4で再現する。同時に回転水槽実験装置の理想的な場でも、2次循環が起きるかを実験する。そして実験の初期値や環境場を任意で変えて、外力の違いで促進・抑制される渦の発達変化を調べる感度実験を行う。<課題2>と平行にして、<課題1>も遂行する。すでに続けているNICAM実験の解析である。研究代表者は既に解析を始めていて、初期結果も学会などで発表している。本実験では、約20個の台風が発生していて、仮説検証には有効である。今後は、台風に発生できなかった事例を集めて、台風発生に至までになにが足りなかったのか、異なった視点での解析を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
<課題2>で用いるTCM4を計算させる大型計算機コンピュータの購入と、室内実験結果の解析ソフトの購入を計画している。回転水槽実験の解析ソフトは、カメラ撮影された実験結果の動画から、流体がどのように動いているかを把握するためであり、本研究には必要となる。大型計算機コンピュータは、既存の故障したコンピュータの利用できるパーツを利用して、コストを抑えた購入を計画している。研究成果を蓄積するためのデータストレージも、随時購入をする。また、研究結果を発表するために、学会参加と科学論文雑誌の投稿に、研究費を使用する。
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