2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740357
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西澤 誠也 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40447892)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 存在確率分布 |
Research Abstract |
本研究では、気象・気候現象を念頭に置き、位相空間における存在確率分布関数の直接時間積分に関する研究を行う。気象・気候モデルの自由度は非常に大きく、現時点ではその存在確率分布関数そのものを直接扱うことは困難である。したがって、本研究では、気象・気候モデルと類似点をもち、自由度があまり大きくない系を対象に、数値計算手法の開発を行い、実際に数値実験を行う。そして、それらの結果をもとに、将来の気象・気候モデルにおける存在確率分布の直接計算の可能性の検討を行う。23年度は、自由度が小さな常微分方程式系(Lorenz 3変数モデル, Lorenz-96 モデル)を対象とし、分布関数の時間発展方程式の導出および、数値計算の実行を行った。分布関数の時間発展を直接的および間接的に記述する方程式であるliouville方程式および、Hopf方程式、低次のキュムラントの時間発展方程式を、上記の2モデルについてそれぞれ導出をおこなった。それぞれの方程式について、差分化を行い、時間発展実験を行った。計算の妥当性を評価するため、なめらかな経験分布が得られるような超多数のモンテカルロシミュレーションを行い、それを真値として、上記の分布関数の時間発展実験の評価・考察を行った。数値実験の結果は、モンテカルロ実験の結果と比較すると誤差が大きく、精度良く計算するためには、よりよりスキームの開発が必要である。また、データ同化で用いられている随伴方程式やアンサンブルによる分布関数変化の妥当性の評価を行うため、複数のデータ同化手法(3次元変分法、4次元変分法、カルマンフィルタ、アンサンブルカルマンフィルタ)の実装を行い、データ同化の実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおり、分布関数の時間発展に関する方程式の導出および、その数値的時間発展実験を行うことができた。ただし、数値実験では、十分な精度が得られていないという問題点が残っている。したがって、自己評価としては、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
最初に、23年度に課題となった、計算精度の問題を解決するため、計算スキームの改良を行う。そのため、気象分野に限らず計算スキームに明るい研究者と議論を行い、よりよりスキームの検討・実装を行う。そして、24 年度以降は、大気変動にとって重要な要素である、系の回転、重力の効果をもつ浅水方程式系を用いて、確率分布の時間発展を調べる。段階的に問題の複雑度を上げていく。まずは、常微分方程式で、23年度よりも自由度を大きくした実験を行うため、別に求めた速度場を元に、ラグランジュ的に粒子を流し、その粒子の位置の存在確率の時間発展方程式を解く。ここで、計算効率向上のため、並列化やGPU利用のためのコード改良を行う。次に、浅水方程式系(偏微分方程式)を対象として、本研究の主目的である状態空間における存在確率の時間発展の開発および実験を行う。将来の気象・気候モデルへの適用可能性の考察のため、同じ計算リソースを、解像度など他の計算要素の向上に当てた場合のインパクトとの比較や、確率分布の直接計算に必要な計算リソースと同程度のリソースを利用したアンサンブル実験を行い、それらを比較し考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、より高次元の計算を行うための計算サーバーを購入し、24年度以降の数値実験のために使用する。また、国内3回、国外1回程度出張し、研究者と打合せ・情報交換を行う。
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