2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740358
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 可織 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (00584236)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 衛星搭載能動型センサ / 雲微物理特性 / レーダ / ライダ |
Research Abstract |
平成23年度はCloudSat衛星データを用いて、特に地上からの観測が困難で不確定性の大きい氷晶雲の巨視的構造・微物理構造の全球分布を明らかにする為に必要な衛星データ解析手法の開発を行い、実データ及び感度実験から開発したアルゴリズムの特性を詳細に調べた。その結果、これまでに開発されたCloudSat衛星データ解析手法では、得られる観測量の数が不十分な場合に解析する事が困難であった雲域においても、雲微物理特性を抽出する事に成功した。全球衛星観測データに開発したアルゴリズムを適用する事により、従来よりも解析可能な雲域が著しく増加する事が分かった。また、検証を行った範囲でこの解析手法が雲微物理特性の統計値等を良く再現できている事が分かった。さらに、CloudSat衛星や気象データと開発した解析手法を用い、氷晶雲の放射効果やその三次元分布を決定する雲の巨視的構造や微物理構造の分布を全球で調べた。その結果、2006年10月の例では雲粒粒径や雲氷量の全球における最頻出値が、従来の手法で解析可能であった雲域のみを考慮した場合には各々約40ミクロン、0.005g/m3付近であったのに対し、新たに解析可能となった雲域では光学的に薄い(厚い)雲域でそれぞれ約20(60)ミクロン、0.001(0.0005-0.016)g/m3付近にある事等が分かった。今後、解析領域の拡大により全球雲微物理特性に関してより良い統計が得られると期待される。これらの研究成果は国内外の学会で発表した他、国際学術誌に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的を達成する為に必要不可欠な開発要素に、平成23年度の研究計画とした雲の巨視的構造・微物理構造の全球分布を定量的に明らかにする為の衛星データ解析手法の開発がある。使用した衛星データは雲の物理特性を得るのに非常に適しているが、そのデータを最大限有効に活用する為には、得られる観測量の数が抽出する雲微物理特性の未知数と比べて少ないシーンに対処する必要がある。この様な場合にも適用できる信頼性の高い解析手法が存在しなかった為、観測データの解釈は困難であると予想された。しかし、平成23年度は独自の方法によりその問題を打開する解析アルゴリズムの構築に成功し、実データを用いて開発した手法の検証と実用化を行う事ができた。さらに、開発した解析手法を衛星データに適用する事で雲物理特性の全球分布の初期解析を実施した。平成23年度の研究成果により、次年度以降に実施予定の衛星データ解析が円滑に進むと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に開発した解析手法の検証をさらに進め、これまでに得られたCloudSat衛星データから雲の微物理特性、雲の巨視的構造と周囲の気象場の関連についての解析を実施する。この為にまず、CloudSat衛星及び同期する他の衛星や再解析データを複合的に利用する事で、CloudSat衛星で観測した雲の微物理特性、生成の気象場、水蒸気量といった気象データを統合した全球データセットを整備する。また、平成23年度の研究計画を遂行する過程で雲/降水粒子の散乱特性に関する理論的研究にも新たな進展があった為、その知見を開発したアルゴリズムに応用し検証する事で、降水(雪)粒子にまで解析対象を広げ、雲の微物理特性に関してより定量的な解析を行う方針である。最終年度である平成25年度は、気候モデルにおける雲の取り扱いを評価する為に、モデルと衛星観測データを比較するシミュレータを作成する。 作成したシミュレータと三年目までに得られた衛星データの解析結果を使用する事で、モデルの雲物理特性の三次元分布を評価し観測との相違の要因を理解する事を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、2011年10月に発生したタイの洪水の影響でハードディスク及びデータ送受信を行う為の計算機の納品が間に合わなかった為、初期衛星解析データとして整備していた三年分の全球データを用いて解析手法の開発とデータ解析を行い研究計画を遂行した。この事により翌年度への繰越額622,068円が発生した。平成24年度は、平成23年度より繰り越した622,068円と合わせ、平成23年度に購入を予定していた衛星データや解析プロダクトの超高速転送/解析処理を行う為の専用の計算機及び、初期衛星解析データ以降に取得され た衛星データの受信の為のストーレージと、平成24年度の研究計画 で予定している衛星データの解析と衛星データ解析処理結果を保存する為に必要となるストーレージ計24TB(実行容量)を計上する。最後に平成24年度の研究課題の遂行には、CloudSat衛星やCALIPSO衛星、EarthCARE衛星ミッションに精通している国内外の専門家との意見交換・研究成果発表が不可欠である。CALIPSO, CloudSat, EarthCARE Joint Workshopでの成果発表及び情報収集をはじめ、研究目的を達成する為の国内外旅費及び研究成果を投稿する為の研究費を計上する。
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Research Products
(14 results)