2013 Fiscal Year Annual Research Report
初期値化による再現・予測データを活用した北太平洋フロント域の十年変動プロセス研究
Project/Area Number |
23740362
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
望月 崇 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 特任主任研究員 (00450776)
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Keywords | 地球温暖化 / 気候予測 / データ同化 / 太平洋十年振動 / 大西洋数十年振動 / 海洋フロント / アリューシャン低気圧 / 大気海洋相互作用 |
Research Abstract |
太平洋十年振動(PDO)に代表される十年規模気候変動について、主に海洋亜表層水温を対象に予測可能性を実証してきたが、より一般的な海面水温(SST)に対する予測性能はあまり高くない。なかでも再現・予測性能が極端に低い亜寒帯フロント域(黒潮親潮続流域)におけるSST予測誤差にターゲットを絞って詳細な感度解析を実施した。これまでに、アリューシャン低気圧(AL)や、より元をたどれば赤道太平洋水温の初期誤差が系統的に影響することを指摘してきたが、初期誤差にまつわるプロセスについてさらに詳しく調べた。 熱帯SST変動がAL変動(例えば、北太平洋中高緯度の冬季海面気圧; NPI)に大きく寄与することはよく知られているが、再現・予測実験の初期値を得るために実施した同化実験データ(気候モデルデータ)に注目すると、熱帯SST誤差が直ちにNPI誤差を説明するわけではない。むしろ、十年規模のAL変動を引き起こすような強制として中心的な役割を果たす熱帯SST偏差の海域が同化データと観測データにおいて異なっているという歪みが主要因であることがわかった。現システムでは海洋の水温・塩分のみを同化しているので、同化データにおける他の(特に大気)物理量の再現性は気候モデル自体の性能にかなり依存する。そのため、たとえデータ同化によって熱帯SSTを観測どおりに表現したとしても、気候モデルのALが受け取る強制は現実とは異なってしまい、結果的に十年規模のAL変動は観測データとうまく対応しない。このようなAL誤差は(中高緯度域の海洋場を直接同化してもなお)力学的に中緯度の海面高度などに誤差を生むように働き、数年の時間をかけてゆっくりと亜寒帯フロント域に影響する。これらの結果は、プロセス研究のみならず気候予測研究の観点からも興味深く、各種学会発表するとともに査読付き雑誌に発表した。
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Research Products
(8 results)