2012 Fiscal Year Research-status Report
地球温暖化に伴う大気重力波活動と赤道準2年振動・半年振動の変化に関する研究
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23740363
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
河谷 芳雄 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 主任研究員 (00392960)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
非定常な重力波パラメタリゼーションを組み込まなくとも赤道準2年振動(Quasi-biennial oscillation: QBO)、半年振動(Semiannual oscillation: SAO)が再現可能で、且つ長期積分にも耐えうるモデルを構築した。水平解像度120kmで、上部対流圏から成層圏の鉛直解像度を500mにし、モデル上端を95kmと50kmにした2つのモデルで実験を行った(それぞれT106L72及びT106L168)。積分期間はそれぞれ100年と50年である。特にT106L168モデルでは成層圏突然昇温(SSW)の解析も可能となる。これらの実験により、地球温暖化時のQBO・SAOの変化やそれが他の現象に及ぼす影響について調べる事が可能になった。 QBO、SAOの再現性が良い事を確かめた。本年度は更にSSWの再現性にも着目した。最新の衛星観測により、高度50km付近の昇温の発生に先行して90km付近の中間圏界面付近に東風が出現し下降する現象が発見された。T106L168実験では類似した現象が再現されている事が確認できた。 更に観測データを用いたQBO変化に関する研究も行った。筆者らの数値実験により、地球温暖化に伴って、Brewer-Dobson(BD)循環に伴う赤道域上昇流が強まることで、下部成層圏のQBO振幅が弱まる事が指摘されている。ベルリン自由大学(FUB)が提供している1953年から2012年までの月平均東西風データを用いて解析したところ、60年に及ぶ観測データでも下部成層圏のQBO振幅が弱まっている事を発見した。本研究は温暖化のシグナルがQBOという現象に現れている事を示すとともに、近年活発に議論されているBD循環の強化を、間接的ではあるが観測結果から示した点に意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に沿ったモデルの構築が完了し、本年度までに想定していた本研究遂行のためのモデル実験を終えることが出来た。中層大気子午面循環の変化、重力波の運動量フラックス・東西風加速や伝播特性の違いを解析する為のデータ作成もほぼ終えることが出来た。 また本研究成果の一部は論文としてまとめることが出来、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
残された数値実験の継続を行い、必要な計算を全て完了させる。気候モデルを用いた温暖化実験をさらに行い、既に計算が終わっている現在気候実験と比較する。その事により、温暖化に伴う中層大気子午面循環の変化、重力波の運動量フラックス・東西風加速や伝播特性の違いを陽に解析・比較する。地表から中間圏界面までカバーした高解像度気候モデルを用いる事で、温暖化時の重力波活動の変化を幅広い高度・スペクトル領域で解析する。 更に、地球温暖化時の運動量フラックス増加に対する位相速度依存性について、そのメカニズムの解明を試みる。地球温暖化に伴う積雲対流・重力波活動及びQBO・SAOの変動に関する成果をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、初年度に購入したデータ記憶装置を有効に利用し、新たなデータ記憶装置を購入する必要がなかった。来年度は追加実験による更なるデータ出力が見込まれるため、データを効率的に使用・保存できる装置を購入する。また論文出版費用を計上する。
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