2011 Fiscal Year Research-status Report
湿潤サーマルのエントレインメントに関する数値的研究
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23740364
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
千喜良 稔 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (20419146)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | サーマル / エントレインメント / LES |
Research Abstract |
本研究の目的は、湿潤サーマルのエントレインメントに関する数値実験を、Jung and Arakawa (2008)によって提案された、渦度ベクトルを計算する方式の渦解像モデル(以下、ベクトル渦度モデル)を用いて行い、エントレインメントをコントロールする物理的要因を調べることである。研究実施計画における前年度の達成目標は、その数値実験に用いるベクトル渦度モデルの開発を完了することであった。 前年度において、Jung and Arakawa (2008)、ベクトル渦度モデルのテクニカルレポート、および関連論文を読了後、同モデルの開発に着手し、力学フレームワークの開発を終了することができた。プログラミングはFortran 90で行われ、ワークステーション上で動作をしている。実験結果の出力には業界で広く普及しているNetCDFフォーマットが用いられている。 動作テストとして、一様な密度および温位を持った基本場に対する、ガウス分布を持つ温位の偏差を初期値とするサーマルの実験を行った。サーマルが環境場の空気をとりこみながら、浮力によって上昇する様子を再現できており、正しく動作していると期待される。 研究実施計画においては、簡単な雲微物理過程の導入を行うこととしていたが、まず、乾燥空気におけるサーマルの性質を調べることとし、その導入は見送った。開発されたモデルでは、拡散項の部分や、実験結果の出力に関わるルーチンが、まだ簡易なものとなっており、今後、さらに拡張していく必要があが、これについては、本年度以降、多くの数値実験を行なう中で、徐々に進めていく予定である。 本年度以降、このモデルを用いて様々な実験を行う準備が整ったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画における、前年度の達成目標は、ベクトル渦度モデルの開発完了である。前年度の研究活動により、同モデルの基幹部分である力学フレームワークの開発は終了することができた。拡散項の取り扱いや、実験結果の出力ルーチンなど、モデルの細かい部分についてはまだ拡張すべき点が残っているものの、これは、本年度以降の研究を進めながら徐々に進めれば問題ない。研究実施計画で本年度に予定されている、同モデルを用いた様々な実験を行う準備は基本的に整っている。以上の理由により、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画における本年度の計画に沿い、前年度に開発されたベクトル渦度モデルを用いて種々のサーマルの実験を行い、そのエントレインメント過程を解析する。まずは、湿潤過程は含めず、乾燥した空気のサーマルの性質を調べる。 エントレインメントの量(サーマルの外部の空気がサーマル内に取り込まれる量)を知るには、サーマルの内部と外部を区別しなければならない。それをどのようなやり方で行うのが良いのかについて検討する。また、どの程度の解像度があれば現象が収束するのかを調べ、適切な解像度を決定する。 成層の安定度、鉛直シアー、サーマルの初期の浮力やサイズを様々に変化させた実験を行う。こうして得られた実験結果について、エントレインメントの振る舞いを解析する。具体的には、相似則を用いた解釈、渦度やエネルギーの生成と関連づけた解釈などを試みる。必要に応じて、湿潤過程を含めた実験を行い、乾燥空気のサーマルとの共通点と相違点を明らかにする。 以上の研究の一部は、来年度に持ち越されることになると考えられるが、可能なところまで進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は、申請時に購入を予定していた高額の数式処理ソフトウェアの購入を取りやめた。これは、申請者が所属するグループで同ソフトウェアを購入し、グループメンバーの共同利用とすることが決まったためである。また、当初の予定よりも海外出張の回数が少なかったことも手伝い、実支出額は、当初予定していた額を大きく下回った。 昨年、研究発表が少なかった分、本年度に発表すべき研究成果が蓄積している。本年度は、旅費や論文投稿に伴う支出が増える見込みであり、繰り越した額の一部はそれに当てる予定である。また、一部は、計画遂行に必要なコンピュータ関連のハードウェアやソフトウェアの更新に振り当てることを検討している。
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