2011 Fiscal Year Research-status Report
初期生命進化のキープロセス「コマチアイト-水反応」の定量的解明
Project/Area Number |
23740382
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 謙太郎 独立行政法人海洋研究開発機構, システム地球ラボ, 研究員 (40512083)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | コマチアイト / 水-岩石反応 / 初期生命進化 / 水熱実験 / 熱力学シミュレーション |
Research Abstract |
本研究課題では、(1)コマチアイトの広範なSi組成が、熱水反応における「蛇紋石-ブルース石-滑石」の相平衡関係の変化を通じて水素の発生量に及ぼす影響、(2)コマチアイトのAl組成の時代変遷が、熱水反応における「蛇紋石-緑泥石」の相平衡関係の変化を通じて水素の発生量に及ぼす影響、(3)コマチアイトを基盤とした初期地球海底熱水系の化学環境と、そのコマチアイト組成変化にともなう時代変遷、の解明を目的としている。本年度は、このうち(1)と(2)について研究を進めた。(1)変質によるH2の発生量は、コマチアイトのMgO含有量20~25 wt%(SiO2含有量40~45 wt%)で明瞭に切り替わり、これ以上では10mmol/kgオーダーの水素が生じ、以下ではサブmmol/kgオーダーの水素しか生じないことがわかった。すなわち、変質という観点から見たコマチアイトと玄武岩の境目は、岩石学上の定義であるMgO=18wt%よりややMgに富んだ20-25wt%にある。(2)コマチアイトのAl組成は、バーバートンタイプからゴルゴナタイプまでの範囲では、水素発生量に大きな影響を与えないことがわかった。人工的に作った、ゴルゴナタイプよりわずかにAlに富んだコマチアイトでは、水素発生量が明瞭に低いことから、Al組成の境界はゴルゴナタイプのトレンドの僅かに高Al側と考えられる。また、カンラン岩は300℃で水素発生量が最高値に達して、それより高温では水素発生量が急激に減少するのに対して、コマチアイトは350℃で水素発生量が最高値に達し、400℃でもあまり下がらないという興味深い特徴を示すことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、当初計画のペースをおおむね維持しており、順調に進展している。また成果として、SiO2含有量とAl2O3含有量に対応する「かんらん岩型変質」と「玄武岩型変質」の境界が存在することを、当初の目論見通り発見することに成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた結果を元に研究目的(3):コマチアイトを基盤とした初期地球海底熱水系の化学環境と、そのコマチアイト組成変化にともなう時代変遷の解明に取り組む予定である。またそれとともに、コマチアイトの変質において、水素発生を規定する鉱物学的、化学的現象をより詳細に解明する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度はシミュレーションを中心に研究を進めたため、水熱実験関係の物品購入を行わなかった。H24年度は、計画に従って、水熱実験のための純金製反応容器、チタン製高圧バルブ等の水熱実験関係の物品購入を行う計画である。
|