2012 Fiscal Year Research-status Report
琉球サンゴの化学組成に基づいた産業革命以後の海洋pHの長期変動復元
Project/Area Number |
23740385
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
浅海 竜司 琉球大学, 亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構, 特命助教 (00400242)
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Keywords | サンゴ / 年輪 / 古環境 / 古海洋 / 化学組成 / 同位体組成 / 海洋酸性化 / 温暖化 |
Research Abstract |
近年,人間活動に起因する「地球温暖化」と「海洋酸性化」の問題が指摘されているものの,過去~現在における海洋の温暖化と酸性化の長期傾向を定量的に把握できる長期の気象観測データは限られる.この長期データの欠損を補完する有用なアーカイブとして造礁サンゴ群体(ハマサンゴPorites sp.:以下サンゴと称す)が挙げられる.本研究では,琉球列島において採取した大型のサンゴ骨格年輪のコア試料について,その各種化学組成・同位体組成(ホウ素同位体組成,酸素同位体組成,ストロンチウム/カルシウム比など)を年単位の高時間解像度で分析し,表層海水の温度,塩分,pHなどの長期時系列データを復元することを目的としている.本年度は,現地調査で取得したサンゴの生息現場の観測環境データと,衛星・船舶で得られている環境データを解析し,古環境復元のためのキャリブレーションを構築した.また,サンゴ骨格年輪のコア試料のCTスキャン解析を実施した結果,骨格の伸長量,密度,石灰化速度の年々変動を明らかにした.過去約20年間の骨格部位について酸素・炭素同位体組成を2ヶ月/データの時間分解能で分析し,年輪形成のタイミングを特定した.さらに,琉球列島との比較検証のために用いた他海域のサンゴ骨格年輪試料の各種化学分析を実施し,北太平洋における過去60年間の温暖化傾向と酸性化傾向を見積もった.得られた成果は,国内外の学術会議や国際学術雑誌で発表した.また,レーザーアブレーション―誘導結合プラズマ質量分析機器システム(MC-ICP-MS,ICP-MS,ICP-AES)ならびに連続フロー型安定同位体質量分析装置を用いた,サンゴのホウ素同位体組成,ストロンチウム/カルシウム比,酸素同位体組成の測定ルーチンを確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,概ね平成24年度研究実施計画どおりに進められた.具体的には,1)現場観測データと衛星再解析データとのキャリブレーション構築,2)CTスキャンによる骨格年輪撮影,3)骨格の年間伸長量,密度,石灰化速度の時系列データ抽出,4)酸素同位体組成の高時間分解能解析による年輪形成時期の特定,5)ミリングによる骨格コアの粉末試料の採取,6)比較検証のために用いた他海域のサンゴ骨格年輪解析,7)同位体・元素分析装置(MC-ICP-MS,ICP-MS,ICP-AES,IR-MS)を用いた各種化学分析のルーチン化,8)化学分析・環境解析から得られた成果の発表を行った.当初の予定よりサンゴの生息年数が多く,年輪形状が複雑でミリング作業に時間を要したため,実試料の各種化学分析の進捗状況が予定より若干遅れているものの,本年度に分析のルーチンを最適化することができた.以上の点から,本研究は概ね順調に遂行されていると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に平成25年度研究実施計画どおり進めていく予定である.まず,サンゴ骨格年輪から採取した粉末試料のホウ素同位体組成,酸素同位体組成,ストロンチウム/カルシウム比などを分析する.次に,得られた年時間分解能の時系列データを解析し,琉球列島における海洋の温暖化と酸性化の度合いを定量的に評価する.得られた成果は随時,国際学術雑誌に投稿するとともに国内および国外の学術会議で発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に,各種化学組成分析,同位体組成分析のために必要な消耗品費用(薬品類やガス類など)を使用する予定である.また,研究成果を国内外の学会で発表するための旅費や学会投稿料,学術論文別吊り費など,成果報告のための費用を使用する予定である.
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[Journal Article] Pronounced interannual variability in tropical South Pacific temperatures during Heinrich stadial 12012
Author(s)
T. Felis, U. Merkel, Ryuji ASAMI, P. Deschamps, E. C. Hathorne, M. Kolling, E. Bard, G. Cabioch, N. Durand, M. Prange, M. Schulz, S. Y. Cahyarini, and M. Pfeiffer
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Journal Title
Nature Communication
Volume: 3
Pages: (965)
DOI
Peer Reviewed
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