2012 Fiscal Year Research-status Report
地球表層環境における鉱物表面/水/有機物界面の構造解析
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23740390
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐久間 博 東京工業大学, 理工学研究科, 流動研究員 (20400426)
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Keywords | 石油の回収率 / 水和 / 固液界面 / X線CTR散乱 / 分子動力学計算 / 第一原理計算 / 吸着 / カルサイト |
Research Abstract |
本研究は、X線CTR散乱実験と第一原理電子状態・古典分子動力学計算を組み合わせて、鉱物表面/水溶液/炭化水素分子界面の構造を0.1 nm以下の分解能で決定し、鉱物表面近傍におけるイオン・有機分子の収着形態、および構造とダイナミクスの関係を理解することを目的としている。鉱物表面近傍における水・イオン・有機分子の収着形態の解明は、毒性元素の回収・石油の回収率向上・新規有機/無機複合体の材料設計など多くの研究分野で重要である。 研究手法は、(1) 高エネルギー加速器研究機構およびイギリスの放射光施設DIAMONDで行う表面X線CTR散乱実験と、(2)分子シミュレーションの2つを用いている。 本年度は研究対象としてカルサイト(CaCO3)結晶と人工海水(塩としてNaCl, MgSO4を含む)の界面とし、界面構造解析を行った。カルサイトは石油の主要な貯留岩の一つであるチョークを構成する鉱物であり、人工海水との界面は、石油の回収率向上に向けて重要な研究対象である。 研究成果:(1) 本年度は新たにX線CTR散乱測定用の試料セルを作成した。液体の密封性の向上と温度制御が可能となり、室温~80℃までの実験を行うことができる。塩としてNaClのみを含む人工海水とNaClおよびMgSO4を含む人工海水を調製し、カルサイトと人工海水界面のX線CTR散乱を室温および40℃の条件下で測定した。結果として、MgSO4を含む場合、温度に依存して界面の構造が変化する様子が見え始めた。今後複数回の実験結果から詳細に解析する。(2)引き続きコペンハーゲン大学のAndersson助教、Stipp教授と、カルサイト/塩水溶液界面の第一原理電子状態計算を行っている。カルサイト表面の親水性が吸着イオンによって変化することが明らかになり、現在投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はX線CTR散乱法による実験と分子シミュレーションの2つの手法から研究目的の達成を目指している。 今年度の実験に関して、温度制御型試料セルの作製、カルサイト/塩水界面の構造解析の実施を目標としていた。今年度は15日間の放射光ビームタイムをいただき、カルサイト/塩水溶液界面の構造解析を順調に実施した。新たに製作した試料セルにより、精密な温度制御・溶液の保持が可能となり、実験データの信頼性が向上している。現在解析プログラムの更新を実施しており、詳細な実験データの解析も可能になりつつある。分子シミュレーションに関しては、昨年度から継続して、雲母/塩水溶液およびカルサイト/塩水溶液界面の構造と物性を調べることを目的とした。今年度は、特にカルサイト/塩水溶液界面について、第一原理計算の結果がまとまりつつあり、ミクロにみた鉱物表面の親水性・親油性を、液滴の接触角で測定するマクロな親水性・疎水性をつなげる理論の構築が進んでおり、研究が順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はさらに試料セル中の溶液の安定性を高めるため、溶液循環型の試料セルを作成することを考えている。これにより、高温(80℃以上)での測定においても気泡のない安定した測定を行う予定である。試料セル作製中は、室温から40℃付近のX線CTR散乱測定を実施し、構造解析を行う。表面X線散乱の専門家であるコペンハーゲン大学のSorensen助教と共同で表面X線散乱の実験を実施し、バックグラウンドの低い実験データの取得を目指す。また表面の形状に関しては、原子間力顕微鏡を用いた観察も実施し、多角的な視点から、カルサイト/塩水溶液界面の構造理解を目指す。 分子シミュレーションについては、第一原理電子状態計算よりも原子数・計算時間共に規模の大きな古典分子動力学計算を実施し、温度変化に伴うカルサイト/塩水溶液界面の構造について原子スケールから明らかにする。 X線CTR散乱測定と分子シミュレーションを同時並行で行い、効率的かつ信頼性の高い固液界面の構造解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は本研究の最終年度であるため、研究のまとめを考慮しつつ、研究費を使用する。 物品:溶液循環型の試料セルに関しては、東京工業大学の設計工作技術センターに協力をお願いし、前期の早い時期に完成させる。また溶液循環に関する物品を購入予定である。消耗品として、鉱物試料・石英ディスク等を購入する。 旅費:1回の国際会議の参加、数回の国内学会の参加を予定している。また、研究を効率的に推進するため、各分野の専門家との研究打ち合わせを予定している。 謝金:使用する予定はない。 その他:論文投稿料・別刷り代を予定している。
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Research Products
(15 results)