2011 Fiscal Year Research-status Report
宇宙シンプレクタイト生成メカニズムの再現実験的解明
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23740392
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
瀬戸 雄介 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10399818)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 宇宙シンプレクタイト / 炭素質コンドライト / 酸素同位体異常 |
Research Abstract |
2007年に始原的隕石(Acfer 094)のマトリックスから発見された宇宙シンプレクタイト(COS, cosmic symplectite)と呼ばれる物質は、これまで知られている惑星物質の中で最も重い酸素同位体組成を示し、宇宙科学の長年の謎であった非質量依存型酸素同位体分別の起源を解くカギとして注目されている。この物質は組織的にも極めて特異であり、酸化鉄と硫化鉄が数十nmスケールで虫食い状に入り組んだシンプレクタイト状組織を示す。本研究ではこの微細組織を手掛かりとして、雰囲気制御下での溶融急冷実験によってその生成条件を制限し、この物質が太陽系の歴史においてどのような場所・時期でできたのかを明らかにすることを目的としている。 平成23年度の前半では縦型管状高温炉にCO2/H2混合ガスによる雰囲気制御システムおよび高精度のPID温調機・サイリスタを組み込み、炉内温度分布の測定や温調機のキャリブレーションを行った。また昇温冷却速度を正確にモニタリングするため、温調機から出力される温度をPC上で記録するシステムを構築した。またこの年次の後半では、COSを模擬した物質を金パイプに封入して溶融急冷実験を行い、実験生成物の初期評価を行った。生成物は、樹脂に埋没後、切断・研磨して、エネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡(SEM-EDX)および電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて表面観察と組成分析を行った。観察の結果、酸化鉄相と硫化鉄相が曲線的(non-facet)な界面をもって虫食い状に絡み合った百nm程度のシンプレクタイト組織を再現していることが分かった。これは実際の宇宙シンプレクタイトよりやや大きなスケールではあるものの、その組織的特徴は極めてよく一致している。本実験の条件は宇宙シンプレクタイトの生成環境を推定する大きな制約になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縦型管状炉の導入およびキャリブレーションはほぼ終了したが、ガス導入による冷却温度の精密制御システムについては、まだ完成に至っておらず次年度の課題となる。一方、実験出発物質の評価・選定は順調であり、試料作製や観察解析に係る技術的な課題はほぼ解決している。また、解析ソフトウェアの開発もほぼ終了している。これらの状況を総合的に勘案して、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は前年度に構築した高温炉をもとに、ガス導入による冷却温度の精密制御システムを組み込む。また、冷却速度および出発物質組成をパラメータとして、実験生成物のTEMによる微細組織観察を行う。これらの実験によって得られた情報と、熱力学的・速度論的な制約ならびに天然鉱物組織との対比から、宇宙シンプレクタイトがどのような条件(温度、圧力、雰囲気)下で、どのようなタイムスケールで反応したのかを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の研究遂行のため、消耗品であるシリコニット発熱材および炉心管を購入する。また、ガス流量を精密に制御するために、デジタルマスフローコントローラーを購入する。さらに実験生成物の観察に必要な電子顕微鏡の消耗品であるLaB6フィラメントや対物絞りの購入を予定している。
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[Journal Article] Oxygen Isotopic Compositions of Asteroidal Materials Returned from Itokawa by the Hayabusa Mission2011
Author(s)
Yurimoto H., Abe K., Abe M, Ebihara M, Fujimura A, Hashiguchi M, Hashizume K, Ireland TR, Itoh S, Katayama J, Kato C , Kawaguchi J, Kawasaki N, Kitajima F, Kobayashi S, Meike T, Mukai T, Nagao K, Nakamura T, Naraoka H, Noguchi T, Okazaki R, Park C, Sakamoto N, Seto Y, Takei M, Tsuchiyama A, Uesugi M, Wakaki S, Yada T, Yamamoto K, Yoshikawa M, Zolensky ME.
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Journal Title
Science
Volume: 333
Pages: 1116-1119
DOI
Peer Reviewed
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