2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙シンプレクタイト生成メカニズムの再現実験的解明
Project/Area Number |
23740392
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
瀬戸 雄介 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10399818)
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Keywords | 宇宙シンプレクタイト / 炭素質コンドライト / 酸素同位体異常 |
Research Abstract |
宇宙シンプレクタイト(COS, cosmic symplectite)とは、2007年に始原的隕石(Acfer 094)のマトリックスから発見された、きわめて重い酸素同位体組成を示す物質であり、宇宙科学の長年の謎であった非質量依存型酸素同位体分別の起源を解明する手がかりとして注目されている。本研究では雰囲気制御下での溶融急冷実験を行うことでその生成条件を制限し、この物質が太陽系の歴史においてどのような場所・時期でできたのかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、前年度までに導入した縦型管状高温炉を用いて、COSを模擬した物質を金パイプに封入して、様々な冷却速度や雰囲気下で溶融急冷実験を行い、実験生成物の評価を行った。生成物は、樹脂に埋没後、切断・研磨して、エネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡(SEM-EDX)および電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて表面観察と組成分析を行った。観察の結果、酸化鉄相と硫化鉄相が曲線的(non-facet)な界面をもって虫食い状に絡み合った百nm程度のシンプレクタイト組織を再現していることが分かった。さらに電子線後方散乱回折(EBSD)法を用いて結晶方位を解析したところ、酸化鉄相と硫化鉄相はそれぞれ樹枝状に共成長し、三次元的にネットワークを形成していることが分かった。また、透過電子顕微鏡による観察では、転位や点欠陥が非常に少ない様子が観察された。これらの微細組織は実際の宇宙シンプレクタイトの特徴は極めてよく再現するものであり、生成環境を推定する大きな制約になると考えられる。
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