2011 Fiscal Year Research-status Report
マルチメガバールでの超高圧実験に基づく地球の内核の不均質構造の起源
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23740396
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
桑山 靖弘 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 助教 (00554015)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地球中心核 |
Research Abstract |
地震波観測によると、地球の中心を構成する内核内部には様々な不均質構造が存在することが報告されている(例えば、地震波速度異方性の不均質構造・層構造・東西半球の不均質構造など)。これらの不均質構造の物質学的起源を明らかにし、内核のダイナミクスを理解するためには、内核の圧力温度条件における内核物質の相平衡関係及び結晶構造に関する知見が必要不可欠である。本課題は、申請者がこれまで改良を行なってきたマルチメガバールでのレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル超高圧高温実験技術を駆使して、内核物質の候補と考えられている鉄-ニッケル-軽元素(硫黄・珪素・炭素・酸素など)合金の圧力・温度・組成を変数とした相平衡関係を決定し、内核の組成と内核内部の不均質構造の物質学的起源を明らかにするとが目的である。本年度は、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル高圧高温発生装置と放射光SPring-8を用いた高温高圧その場観察実験により、地球の核の条件での鉄および鉄-ニッケル合金の詳細な結晶構造を解明することに成功した。また、これに基づき、第一原理動力学計算を行い、これらの鉄の高圧高温下における弾性的性質を明らかにした。これらに基づき地震波観測のデータと照らし合わせることにより、地球の中心核には鉄及びニッケル以外の存在が必要不可欠であることを明らかにした。現在、第三成分元素としてもっとも有力であると考えられている珪素を含む合金について、実験、理論、地震波観測との比較検討などの研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず(1) 地球中心核圧力領域における超高圧高温発生実験技術の確立に関してであるが、断熱性の非常に高いSiO2ガラスを用い、また加熱用レーザーや温度測定用光学系の最適化を行なうことにより、試料室内の温度・圧力不均質といった技術的課題を克服した。特に、超高圧高温条件下において非常に大きな問題となる温度不均質であるが、断熱材の適切な配置と、試料サイズの増大により、大幅な改善が可能となり、これまでにないクリアなX線回折像を取得することに成功した。これにより、固相の状態だけでなく融解も明らかにすることに成功した。次に(2) 放射光X線その場観察による、地球中心核圧力領域での鉄-軽元素合金の相平衡決定であるが、(1)で改良した技術を用いて鉄、及び鉄-ニッケル合金だけでなく、それらへの珪素の固溶量の決定にも成功した。従って、十分に計画を達成していると考える。さらに、(3) マルチメガバール領域からの回収試料の組織観察及び組成分析による相平衡決定についてであるが、これまで、鉄合金系の試料は反応性に富むために、よほど注意深く実験を行わないと、ガスケット材やアンビル、試料封入時に混入した水分などと容易に反応を起こす。従って、X線回折実験に加えて、回収試料の組織観察及び組成分析を組み合わせることは、結果の信頼性を向上させる上で必要不可欠である。しかし、核を想定したようなマルチメガバールでの実験試料は厚さ5ミクロン以下と非常に微小なため、回収・研磨・分析に高度な技術が必要であり、これまでそのような研究は報告されていない。本研究では、FIB(収束イオンビーム加工機)とFE-SEM(電解放出型SEM)を用いた、回収試料の分析も行い、非常に明瞭な相転移をX線回折だけでなく、回収試料分析からも明らかにした。以上のように、十分に当初の目的を達成していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたように、技術的には十分に当初の計画を達成している。また、研究内容についても、順調に成果が出始めている。今後は当初の計画に沿ってさらに詳細な相平衡関係を明らかにすると共に、地震波観測データと組み合わせることにより、地球中心核の構造に関する議論を進める。具体的には、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル高圧高温発生装置と放射光SPring-8を用いた高温高圧その場観察実験軽元素の固溶量の圧力温度変化をより詳細に決定する。また、回収試料のFIB(収束イオンビーム加工機)とFE-SEM(電解放出型SEM)を用いた化学分析によりX線回折だけではなく化学分析もあわせた相平衡を明らかにする。また、これらにより融解関係も明らかにする。また、本年度設計を行なった、超高圧発生用ダイヤモンドアンビルセルを導入する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、1年目に超高圧高温発生用ダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置と温度測温用反射対物レンズを導入する予定であったが、より入念な設計を行なった結果、設計図の完成が本年度にずれ込んでしまった。したがって、昨年導入予定の、超高圧高温発生用ダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置と超高精度温度測温システムの導入を今年度行なう。また、当初の想定よりも早く、実際の地震波観測データと比較検討可能な、鉱物物性データの取得に成功しつつあるため、これらのデータと地震波観測データを組み合わせた内核の構造の解明に関するデータ解析にも経費を使用する。それ以外に関しては、当初の予定通り、実験を遂行し、さらに詳細かつ正確なデータを取得するために経費を使用する。
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Research Products
(3 results)