2013 Fiscal Year Research-status Report
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23740398
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
柵山 徹也 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (80553081)
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Keywords | アルカリ玄武岩 / プレート内火山 / スタグナントスラブ / ユーラシア大陸東縁部 / 脱水した海洋地殻 / 沈み込んだ堆積物 / マントル遷移層 / 流体 |
Research Abstract |
本研究計画では、沈み込んだ海洋プレートがどの程度背弧側の上部マントルまで影響を及ぼしているのかを明らかにするために、ユーラシア大陸東縁部の新生代プレート内火山の岩石学的・地球化学的検討を行っている。同地域には散発的かつ広範囲にアルカリ玄武岩火山が噴出しており、コンパイルしたそれらの火山岩の化学組成に基づいて、大きく2種類の端成分的性質を持つ玄武岩と、それらの混合により生成した玄武岩に分けられるとする考えを筆者は新たに提案している。しかし本地域の玄武岩は、これまでも化学分析の報告は多数あるが、全データ(主成分、微量、同位体)の揃った報告はほとんどなかったため、詳細な議論ができないという問題があった。 平成24年度までに当初予定していた試料の採取(中国・韓国に噴出した約40火山)は全て終了し、3分の2の試料に関しては分析も終了し、その結果を平成25年度に論文(2編)として発表した。この論文では筆者の提案している二つの端成分的マグマのそれぞれの成因について主成分元素、微量元素、放射性同位体データすべてを用いて検討した。その結果、沈み込み時に脱水した海洋地殻物質の融解と沈み込んだ堆積物に由来する流体の寄与による上部マントルかんらん岩の融解がそれぞれ2つの端成分的マグマの成因に寄与していることを示すことに初めて成功した。このことは沈み込むスラブの影響はいわゆる沈み込み帯にあたる比較的浅い部分(深さ<300km)のみならず、それよりの深いマントル遷移層付近にまで及んでいる可能性を示唆する。 残りの試料に関しても、全岩の粉末試料は微量元素/同位体分析をすでに開始し、平成26年度前半にも結果が出る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ユーラシア東縁部新生代プレート内玄武岩火山の(1)地殻内での分化プロセスを適切に評価した上で、(2)マグマ起源物質やマントル融解条件を推定し、(3)火山活動をもたらした上部マントルプロセスを明らかにし、(4)他のプレート内火山との対比を行うことを目的として、ユーラシア大陸東縁部のプレート内玄武岩火山を対象に研究を行なっている。 この地域にあると考えられる2種類の端成分的組成を有する玄武岩のうちの一つの端成分が噴出する中国東部では、当初予定していた岩石採取、各種分析を全て終了した。その結果、中国東部の一部の玄武岩火山の化学組成は、かんらん岩の部分融解では生成が困難なこと、脱水を経験した中央海嶺玄武岩が二酸化炭素存在下で融解することでうまく説明できることを明らかにした。さらに、その特殊な玄武岩の噴出地域が、停滞スラブの分布とよい一致を示すことから、沈み込んだスラブ内海洋地殻の一部が背弧域で何らかのメカニズムで上昇してきている可能性を初めて指摘した。一方、もう一つの端成分玄武岩はユーラシア大陸東縁部の広範囲に噴出しており、韓国に50万年前に噴出した玄武岩も同一グループの玄武岩である。論文では、その地球化学的特徴が、沈み込んだ堆積物に由来する流体の寄与により上部マントルカンラン岩が融解することで生成するというモデルが成因を最もうまく説明することを新たに示した。さらに、中国東部玄武岩に酷似した化学組成を有する玄武岩として、フランスやロシア、アラスカのプレート内火山との比較と起源の違いも検討している。 当初計画していたサンプリングは、中国東部・東北部含め予定通り全て終えることができた。さらに、両端成分玄武岩については取得できる限りの分析データを用いて包括的に成因を検討した論文もすでに2編出版することができ、現時点で達成目標の大部分は達成されていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画していたサンプリングはほぼ全て終えることができ、試料の3分の2は分析・まとめ・論文出版まで終了しているため、今後は残る試料の分析とまとめ、追加分析、及び全体の総括、さらに発展的な研究を行いたい。 平成25年度予定していた残りの試料の分析についても、TIMS分析を残すのみとなり、平成26年度中にはまとめられる段階にある。一方、本研究を含めた最近の研究から、停滞スラブからの水・二酸化炭素の供給が、中国東部・東北部両地域における火成活動において重要な役割を担っていることが明らかになっている。しかし、斑晶組み合わせの単純な玄武岩試料が多く、あ岩石学的なマグマの含水量推定が困難である。そこで追加として、斑晶の分離を行い、メルト包有物の含水量・二酸化炭素含有量の測定を追加で行うことを新たに計画した。斑晶の分離およびメルト包有物分析には、JAMSTECに設置されている鉱物分離装置と二次イオン質量分析装置を用いるため、追加で分析装置を購入する必要はなく、申請している予算額の範囲内で分析できる。ただし、採取済みの試料では十分な量の斑晶が分離できないため、追加でサンプリングを行う必要性あったが、共同研究者との調整がうまくゆかず、追加サンプリングは実施できなかった。そのため、平成26年度に追加でサンプリングを行いたい。 また、論文で報告した玄武岩試料の中に、非常に特徴的なカンラン石結晶を新たに発見した。このカンラン石結晶は外見は通常の斑晶のように見えるが、非常にMgに富む化学組成を有しているにもかかわらず、Ni含有量は極端に低い特徴を有する。このようなカンラン石は沈み込み帯の玄武岩火山に極稀に見つかるか、沈み込み帯において蛇紋石から脱水再結晶化した変成カンラン石、もしくはダイヤモンド中の包有物として確認されているのみであり、それらとの関連性は、プレート内火山の成因を考える上で非常に興味深い。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画は実施開始から試料採取(計三回)、各種分析を順調に行い、非常に興味深い結果を早い段階で得ることができたため、最終年度前に2編の国際誌と関連した内容の国際誌1編を当初の計画より前倒しで出版することができた。そのため、平成25年度は論文執筆や修正に大きな労力をかけることとなり、結果として分析や観察に割く時間・費用が当初予定していたよりも少なくなってしまった。さらに、サンプリング予定地域(中国東北部)の気象災害(夏季の洪水)による道路・橋の寸断、共同研究者が長期でオーストラリア出張をすることとなり日程調整がうまくいかなかったことなども重なり、予定していたサンプリングを実施することができなかった。 平成26年度は、平成25年度実施できなかった以下の分析及び試料採取を行うための物品費、旅費および人件費・謝金に用いる。(1)岩石からの鉱物分離、(2)二次イオン質量分析装置による鉱物中含水量測定、(3)鉱物中メルト包有物のラマン分光分析、(4)上記分析に必要な量の鉱物試料を確保するための追加サンプリング。平成26年度前半までに予備的に項目1、2および3を行い、足りなかった場合、10月以降で(4)サンプリングを行う。 上記1から4までとは別に、すでに分析を終えつつある採取済みの試料について論文執筆および学会発表のための費用に当てる。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Melting of the Uppermost Metasomatized AsthenosphereTriggered by Fluid Fluxing from Ancient Subducted Sediment: Constraints from the Quaternary Basalt Lavas at Chugaryeong Volcano, Korea2014
Author(s)
Tetsuya Sakuyama, Shinji Nagaoka, Takashi Miyazaki, Qing Chang, Toshiro Takahashi, Yuka Hirahara, Ryoko Senda, Tetsumaru Itaya, Jun-Ichi Kimura, Kazuhito Ozawa
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Journal Title
Journal of Petrology
Volume: 55
Pages: 499-528
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Melting of dehydrated oceanic crust from the stagnant slab and2013
Author(s)
Tetsuya Sakuyama, Wei Tian, Jun-Ichi Kimura, Yoshio Fukao, Yuka Hirahara, Toshiro Takahashi, Ryoko Senda, Qing Chang, Takashi Miyazaki, Masayuki Obayashi, Hiroshi Kawabata, Yoshiyuki Tatsumi
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Journal Title
Chemical Geology
Volume: 359
Pages: 32-48
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Melting of a stagnant slab in the mantle transition zone: Constraints from Cenozoic alkaline basalts in eastern China
Author(s)
Tetsuya Sakuyama, Wei Tian, Jun-Ichi Kimura, Yoshio Fukao, Yuka Hirahara, Toshiro Takahashi, Ryoko Senda, Qing Chang, Takashi Miyazaki, Masayuki Obayashi, Hiroshi Kawabata, Yoshiyuki Tatsumi
Organizer
IAVCEI2013 Scientific Assembly
Place of Presentation
かごしま県民交流センター(鹿児島県)