2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノモル水素安定同位体定量法を応用した遠隔火山噴気温度測定手法の開発
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23740399
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小松 大祐 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (70422011)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 水素 / 火山ガス / 水素同位体 / 遠隔温度測定 / 同位体平衡温度 |
Research Abstract |
大気中水素について水素安定同位体組成が定量可能な高感度定量法を確立し、火山ガス中の水素ガスについて、同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定を行った。まず従来の同位体組成定量法を改良し、より高感度かつ高精度な分析法を開発した。具体的には、温度の異なる多段階の分離カラムによって対象となる水素ガスを大気中の主成分から完全分離することに成功し高感度化を実現した。さらに実験操作を自動化した分析システムを構築し、分析時間の短縮および高精度化を実現した。確立した定量法は水素濃度0.5ppmv程度の清浄大気試料について、微小量250mlを使って、分析精度4‰以下の高感度かつ高精度水素同位体組成定量を実現した。これは現状で世界最高感度の定量法である。確立した定量法を応用し、噴気孔にアクセス可能な火山を中心に噴気ガス試料と火山ガスプルーム中の大気試料を採取し、含まれる水素の安定同位体組成について定量した。噴気における同位体比(実測値)と大気試料における濃度と水素同位体比の関係から求めた算出値を比較した結果、樽前山(630度)、恵山(107度)、九重硫黄山(203度)において噴気の実測値と算出値は一致し、同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定が有効であることを実証した。さらに噴気孔にアクセスできない火山、阿蘇山中岳において同様の方法論を応用し、噴気温度の推定を行った。火口周辺で火山ガスプルーム中の大気試料を採取し、噴気における同位体比を算出し、同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定を行った結果、噴気温度を868±97度と推定できた。これは別手法の化学組成比から見積もった噴気温度と誤差の範囲内で一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)当初予定していたとおり、定量法の高感度化および高精度化に成功し、火山ガスプルームの試料のみを用いて噴気孔における水素ガスの水素安定同位体組成を求めることが可能になった。これにより噴気温度について推定可能になったため、複数の火山(樽前山、恵山、九重硫黄山、阿蘇山中岳)において実際に観測を行った。これらの結果から、定量法改良と数例の観測によって、本研究において提案する、水素安定同位体組成定量による同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定が十分に有効であると実証できた。さらに既に定量法と一部の火山ガスの観測についてそれぞれ論文を通じて公表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の定量法改良と数例の観測によって、本研究において提案した方法論である、水素安定同位体組成定量による同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定が十分に有効であることが示せた。今後も噴気孔にアクセスできない火山について、この方法論を応用し、火山活動の良い指標となる噴気温度の観測を実施したい。また活発な火山活動を示す火山について、今後定期的な観測を実施し、その他の火山活動度の指標(火山性微動など)とともに噴気温度の推移について観測を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は初年度で確立した方法論について、成果を発表するとともに、活発な火山活動を示す様々な火山に応用し、火山活動の良い指標となる噴気温度の観測を実施する。次年度の研究費の使途について、備品の購入は予定しておらず、これまでの成果を発表する際に必要な旅費、各火山の観測のために必要な旅費及び物品の購入、また分析に必要な消耗品の購入を中心に使用する予定である。昨年度に生じた187,689円の執行残高については、既に23年度中に納品済みであり、自動分析装置の維持・補修のための部品(金属バルブ)の購入支払いを中心に使用した。
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