2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノモル水素安定同位体定量法を応用した遠隔火山噴気温度測定手法の開発
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23740399
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小松 大祐 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (70422011)
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Keywords | 水素 / 火山ガス / 水素同位体 / 遠隔温度測定 / 同位体平衡 |
Research Abstract |
初年度に確立した、同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定法について、①より高い温度領域において応用可能かどうかを検証するために、噴気孔にアクセス可能な火山のうち、国内において最も高い温度(約800度)の噴気が観測されている鹿児島県薩摩硫黄島において、噴気ガス試料と火山ガスプルーム中の大気試料を採取し、含まれる水素の安定同位体組成について定量した。噴気における同位体比(実測値)と大気試料における濃度と水素同位体比の関係から求めた算出値を比較した結果、算出値は噴気の実測値と誤差の範囲内で一致し、火山ガスプルームを採取し、同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定が700度を超える高い温度領域においても有効であることを実証した。また、②本方法で推定可能な温度の下限値を見積もる目的で、同じ場所で広い温度領域(100~500度)の複数の噴気が観測されている福島県吾妻山において同様の観測を行った。その結果、噴気の最高温度が200度以下に低下していたため、下限値は195度以上と限定的な結果が得られた。さらに、③昨年度に続き、噴気孔にアクセスできない活発な火山活動を示す火山として、熊本県阿蘇山中岳において火山ガスプルーム中の大気試料を複数回採取し、噴気温度の時間変化について観測を行った。その結果、推定した噴気温度は932±80度(9月)、927±54度(11月)であり、この2ヶ月間ではほぼ一致していることが分かった。しかし以前(2010年11月)の観測で得られた推定温度(868±97度)と比較すると、今年度推定した温度は数10度上昇している可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に大気中水素ガスの高感度安定同位体比定量法の開発に成功し、火山ガスプルームの試料のみを用いて噴気孔における水素ガスの水素安定同位体組成を求めることが可能になった。噴気孔にアクセス可能な火山(樽前山、恵山、九重硫黄山、吾妻山、薩摩硫黄島)における観測結果から、本研究において提案した水素安定同位体組成定量による同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定法が十分に有効であり、さらに広い温度範囲に応用可能であることが実証できた。また、定量法と一部の火山ガスの観測結果についてそれぞれ論文を通じて公表することが出来た。その後、噴気孔にアクセスできない阿蘇山中岳において定期的に観測を実施し、噴気温度の推移について観測を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も噴気孔にアクセスできない火山(阿蘇山中岳)について、この方法論を応用し、火山活動の良い指標となる噴気温度の定期観測を実施し、その他の火山活動度の指標(火山性微動など)とともに噴気温度の推移について観測を行いたい。さらに、噴気孔へのアクセスだけではなく入山そのものが規制させれている活発な活動を示す火山(桜島)について、無人飛行機(カイトプレーン)を用いて上空1000~1500mに広がる火山ガスプルームを採取し、情報が極めて少ない活動的な火山の噴気温度を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は確立した方法論を活発な火山活動を示す阿蘇山中岳や桜島をはじめとした様々な火山に応用し、火山活動の良い指標となる噴気温度の観測を実施する。次年度の研究費の使途について、備品の購入は予定しておらず、これまでの成果を発表する際に必要な旅費、各火山の観測のために必要な旅費及び物品の購入、また分析に必要な消耗品の購入を中心に使用する予定である。
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