2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノモル水素安定同位体定量法を応用した遠隔火山噴気温度測定手法の開発
Project/Area Number |
23740399
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小松 大祐 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (70422011)
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Keywords | 同位体交換平衡 / 水素同位体 / 酸素同位体 / 温度推定 / 大気中水素 / 安定同位体 / 火山ガス / 阿蘇山 |
Research Abstract |
初年度に大気中水素ガスの高感度安定同位体比定量法の開発に成功し、火山ガスプルームの試料のみを用いて噴気孔における水素ガスの水素安定同位体組成を求めることが可能になった。噴気孔にアクセス可能な火山(樽前山、恵山、九重硫黄山、吾妻山、薩摩硫黄島)における観測結果から、本研究において提案した水素安定同位体組成定量による同位体平衡温度を利用した噴気温度の遠隔測定法が十分に有効であり、さらに広い温度範囲に応用可能であることが実証できた。また、定量法と一部の火山ガスの観測結果についてそれぞれ論文を通じて公表することが出来た。その後、噴気孔にアクセスできない阿蘇山中岳において定期的に観測を実施し、噴気温度の推移について観測を行った。 活動的火山の一つである阿蘇火山中岳第1火口において、2013年11月までに合わせて7回の観測を行い、各回14-26試料のプルーム試料を内容積300mLの真空ガラス容器に大気圧まで分取して持ち帰り、連続フロー型質量分析システムを用いてH2濃度および水素安定同位体組成を分析し、噴気ガス中のH2の水素同位体比と噴気温度を推定した。 噴気プルーム中のH2濃度は、1.5ppmv以上と対流圏大気中の水素よりも高いH2濃度を示した。噴気プルーム中のH2濃度と水素同位体比の関係はいずれも明瞭な二成分混合線を示し、噴気ガス中のH2の水素同位体比を10 permil 程度の小さなばらつきで推定することが出来た。ここから島弧火山のマグマ水の値(-24+-7 permil vs VSMOW)を噴気ガス中のH2Oの水素同位体組成として用い、同位体平衡から求めた噴気温度は838~929度と推定できた。安定同位体を指標に用いた噴気の遠隔温度推定により、同噴気は赤外放射温度計を用いた観測表面温度の長期変化や赤熱の有無とは無関係に、噴気ガスの平衡温度に近い高温状態を保ちつつ、100度程度の有意な時間変化があることが分かった。
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