2011 Fiscal Year Research-status Report
古細菌由来の脂質バイオマーカーを用いた古海洋環境変動解析
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23740401
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大庭 雅寛 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40436077)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 古細菌 / バイオマーカー / 古環境 / エーテル脂質 / 嫌気環境 |
Research Abstract |
・前期三畳紀堆積岩中のエーテル脂質分析南中国貴州省で採取された前期三畳紀堆積物のエーテル脂質を中心とした有機地球化学的分析を行うことによって、主に当時の海洋無酸素水塊の動態を明らかにすることを目的とした。分析の結果、古細菌由来のアーキオールや硫酸還元菌由来と考えられるモノエーテル・ジエーテル脂質が検出された。検出されたエーテル脂質は、エステル脂質に比べて比較的保存されやすいと考えられるが、しかし、エーテル脂質は1億年以上古い堆積物から検出された例はこれまでなかった。従って、本研究におけるエーテル脂質の検出は、これまでで最も古い検出例である。検出されたエーテル脂質の一部について安定炭素同位体比の測定を行った結果、堆積当時にメタン消費古細菌と硫酸還元菌の共生による嫌気的メタン酸化が起きていた可能性が示唆された。以上の内容を論文にまとめ、現在国際誌に投稿中である。加えて、他の地域の前期三畳紀堆積岩からのエーテル脂質検出を試みるため、中国貴州省で複数の露頭調査および試料採集を行った。・エーテル脂質標準物質の作成古細菌や硫酸還元菌らの極限環境微生物が持つエーテル脂質を、それらの菌体を培養して得る予定であったが、九州大学の山内敬明准教授がエーテル脂質の有機化学合成を試みていることを第29回有機地球化学シンポジウムで知り、山内准教授と共同でエーテル脂質の合成を行うことにした。その理由として、有機合成なら希望する分子構造のエーテル脂質を高収率で得られること、極限環境微生物の培養には硫化水素など有毒ガスが発生し、地震などに対する安全対策が必要不可欠であるが、有機合成ならそのような対策が不必要であること、などが挙げられる。古細菌に特有のエーテル脂質はすでに山内准教授が合成しており、現在、硫酸還元菌に特有のエーテル脂質の合成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に行う予定であった標準試料の作成、およびその続成変化に関する検討は、エーテル脂質の有機化学的合成を採用したため予定より遅れており、平成24年度に一部持ち越す予定である。一方、実際の堆積物試料中のエーテル脂質に関する分析研究は、平成24年度以降に実施する予定であったが、これまでに最も古い検出例となる、三畳紀堆積岩からの検出の成功などによって、すでに重要な成果を得ている。従って、多少の予定の変更はあるが、全体的観点から本研究がおおむね順調に進展しているものと判断することができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 古細菌由来の脂質バイオマーカーの続成変化生成物に関する検討平成24年度は、有機合成によって得られた標準試料を用いて、堆積物中の環境を模した閉鎖系において人工的な続成変化をさせて、生成した分解生成物などをGC/MSで調べる。これら分解生成物は実際の堆積物中においても存在すると考えられ、したがって、堆積物を用いたバイオマーカー分析の同定及び定量の標準試料とする。2. 環境事変期堆積物中に存在する古細菌由来のバイオマーカーの有機地球化学的分析平成23年度と同様、顕世類代の様々な生物事変期堆積岩中に含まれる古細菌由来のバイオマーカーについて有機地球化学的分析を行い、時間軸に対するバイオマーカーの組成や濃度の変化を明らかにする。得られた結果から、古海洋において生息していた古細菌の組成やバイオマス変動を解析し、さらには、他の生物のバイオマーカー分析やこれまで明らかにされている他の地球科学的研究結果との比較・検討も含めて考察を行い、堆積当時の古海洋環境変動解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の直接経費80万円の主な支出費目として、今後の研究の推進方策に示した「古細菌由来の脂質バイオマーカーの続成変化生成物に関する検討」や、「環境事変期堆積物中に存在する古細菌由来のバイオマーカーの有機地球化学的分析」に使用する試薬類(高純度のジクロロメタンやメタノール、ヘキサンなどの有機溶媒)に25万円を、分析に使用するガラス器具類(ソックスレー抽出器やナス型フラスコ等)に10万円を使用する。また、分析に使用するGC/MSの消耗品(フィラメントやカラム装着用ナット等)に5万円を使用し、GC/MS用高純度ヘリウムガス(14m3)に7万円を使用する。旅費として、国内学会(日本地球化学会)参加費用として10万円、エーテル脂質の合成を行っている九州大学や、安定炭素同位体比の分析のためのGC/C/IRMSのある茨城県つくば市の産業技術総合研究所に赴くなど、研究打ち合わせや調査研究のための旅費として15万円を使用する。
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