2012 Fiscal Year Research-status Report
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23740402
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古川 善博 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00544107)
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Keywords | 隕石 / アミノ酸 / 衝突 / 生命の起源 |
Research Abstract |
昨年度の成果により、衝突回収実験の際の密閉容器の開発が完了した。この容器を用いて、これまでに隕石から発見されている有機物であるギ酸、メチルアミン、アンモニアを用いて、ギ酸+アンモニアおよびギ酸+メチルアミンの衝突回収実験を行った。回収試料から水溶性有機物を抽出してアミノ酸、アミン、カルボン酸が生成するかどうか、その場合は速度の変化に対してそれらの生成量がどのような変化を見せるのかを分析した。また、これまでの研究で、密閉容器の気密性は確保できたが、抽出の際に全量の抽出が出来るとは限らないため、試料に内部標準物質を加えることとして、適切な物質の検討を行った。 実験の結果、ギ酸+アンモニアおよびギ酸+メチルアミンの両方の実験で0.7-0.9km/sの衝突速度でアミノ酸の一種であるグリシンが生成することが明らかになった。このことは隕石の母天体である小惑星に存在するアミノ酸の一部が隕石衝突により生成したことを示唆する重要な結果である。ギ酸+アンモニア実験では生成物からメチルアミン、エチルアミンが検出された。このことも、隕石衝突によって、有機物がより高分子量の別の有機物に変化することを示している。たま、ギ酸+アンモニアの実験では、生成したアミンの量は衝突速度に依存して増加したことから、より高い衝突速度やより長い衝撃持続時間では反応がさらに進み生成量が増加する可能性がある。また、この他にホウ酸による糖の安定化の影響についても研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初期の回収容器の開発に予定以上の時間を要したが、その後の実験は上手くいっており、既に隕石の母天体である小惑星に存在するアミノ酸の一部が隕石衝突により生成したことを示唆する重要な成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、ギ酸、メチルアミン、アンモニアを使って実験を行い、アミノ酸、アミンの定量を行ってきた。今後は、分析対象を核酸塩基や糖にも広げるとともに、反応出発試料の有機物もギ酸、メチルアミンだけではなく、アミノ酸にも広げる予定である。さらに、衝突速度範囲も拡大する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、平成25年3月に使用し、平成25年4月に支払いが 確定している。次年度は最終年度であるため、現在までの研究成果の一部を国際学会で発表すると共に、データを整理して論文にまとめて、国際誌に投稿する予定である。この為の海外渡航費、英文校閲費、データ処理機器購入費を使用する予定である。さらに、これと並行して実験を重ねるため、実験出張費用、試薬等の消耗品費、実験補助員の人件費を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)