2011 Fiscal Year Research-status Report
プラズマパラメータ制御による高感度光ポンピングヘリウム原子磁気センサの開発
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23740407
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 陽介 京都大学, 先端医工学研究ユニット, 助教 (20589189)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プラズマ / 光ポンピング / 磁気センサ |
Research Abstract |
本研究では、放電プラズマにより生成した4He(23S1)準安定励起原子をセンサ原子とした高感度光ポンピング原子磁気センサの検討を行うことを目的としている。H23年度においては、光ポンピング原子磁気センサとして適した放電セルの条件を見つけるため、ヘリウム準安定励起原子の密度の測定や素過程の解析を行い、作製した放電セルの磁気センサとしての特性を評価することを計画していた。平成23年度の研究目的に即した研究実績の概要は以下の通りである。まず光ポンピング原子磁気センサに関する基礎的な知見を得るため、アルカリ金属原子を用いた従来型の光ポンピング原子磁気センサを作製し、その基礎特性を測定した。これによりセンサ原子の密度と必要なレーザ光の強度の相関を明らかにし、放電セル作製時の指針を得た。また上記センサにて実際にヒトの心磁波形を計測し、光ポンピング原子磁気センサの生体磁場計測への応用に関する知見を得た。超高真空下において放電セルを300℃で24時間程度加熱した後、その内部にヘリウムを封入し残留大気成分の少ないセルを作製した。これらのセルに対して発光分光を行ったところ、極微量の残留大気中の酸素分子とヘリウムとのペニング反応による酸素原子からの発光が観測され、解析時には酸素の影響についても考慮する必要があることがわかった。次にセル内圧を大気圧として作製した放電セルに対してレーザ吸収分光を行い、ヘリウム準安定励起原子の密度が従来の光ポンピング原子磁気センサのセンサ原子の密度に達することを実験的に明らかにした。このセルを用いて磁気センサを構築し磁場感度の計測を行ったが、環境磁場ノイズ等の影響が大きいため十分な磁場感度が得られず、ノイズの低減、ポンプ光強度の最適化等のさらなる方策が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画で実施を予定していた実験(放電セルの作製、ヘリウム準安定励起原子密度の測定、放電セルの磁気センサとしての動作)に関してはおおむね実施できた。しかし、センサの感度検証実験において、予測したような感度を得ることができず、ノイズ低減、センサ動作条件の選定について工夫が必要であることが判明したため、実施計画よりもやや遅れていると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度の方針としては、まず第一にH23年度の研究にて判明した課題である磁場ノイズの低減およびセンサの動作条件の最適化を行う予定である。具体的には導線に電磁シールド、センサ本体にアクティブシールドを施すなどして磁場ノイズを低減し、さらにポンプ光、プローブ光の最適条件を模索することで高感度化を目指す。その後、そこで得られた知見を基にして、当初の研究実施計画通り放電セルからの発光を光ポンピングに利用した原子磁気センサの検討を進める。また従来より用いられているカリウムをセンサ原子とした磁気センサについても、カリウムの気化を放電によって行うことにより、応答性と即時性の高いセンサの作製を行う。これらのセンサに関してもノイズの低減などの課題が存在すると考えられるが、この場合でも先に適用したノイズ除去方法が有効である。これらのセンサを作製するとき、センサセルの形状はより洗練される必要があると考えれられ、研究を進める中でセンサセル形状の最適化も行い、より高感度なセンサの実現を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度においては、放電セルの形状を単純にすることでセル作製コストを低減しているため次年度使用研究費が生じた。H24年度においては、H23年度の結果を踏襲するものの、センサ原子を生じさせる機構が異なるので、最適なセンサセルの形状についても変化してくる。この課題に対して、形状の異なる複数の放電セルを作製することにより、コンパクトかつ高感度なセンサを実現する。そのため、H24年度の研究費は新規放電セルの作製および磁気センサ本体のコンパクト化に必要な光学素子の購入に充てる。
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