2011 Fiscal Year Research-status Report
連結階層シミュレーションモデルで拓く核融合プラズマ研究の新展開
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23740411
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
長谷川 裕記 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60390639)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / 計算物理 / ハイパフォーマンス・コンピューティング / 磁気圏・電離圏 / 自己組織化 |
Research Abstract |
本課題では、核融合プラズマをはじめとする様々なプラズマ中で生起する多階層現象について、連結階層アルゴリズムを用いたシミュレーションコードを開発し、それによる自己無撞着なシミュレーションを実現させ、いままで解明されてこなかったそのダイナミクスについて、新しい知見を獲得することをめざしている。特に、(1)磁場閉じ込め装置周辺部におけるプラズマ輸送、(2)電磁波や粒子ビームによるプラズマ加熱、(3)オーロラシミュレーションの高精度化などを対象として研究を進めている。 平成23年度は、このうち、(1)磁場閉じ込め装置周辺部におけるプラズマ輸送を中心に研究を進めた。まず、既存の3次元静電粒子シミュレーションコードを用いて、微視的な物理の観点から、周辺部におけるプラズマコヒーレント構造(ブロブ)のダイナミクスについて調べたところ、ブロブが、第一壁の方向へ伝播し、さらに、マッシュルーム状に崩壊していく様子を観測した。また、ブロブの伝播速度が初期の大きさの2乗に反比例する関係が得られた。これらの伝播特性は、過去の2次元簡約化流体モデルによるシミュレーションでも示されており、粒子シミュレーションにおいても、このように矛盾のない結果が得られることがわかった。これらの成果については、第53回アメリカ物理学会プラズマ分科会などにおいて報告し、論文としてまとめた。さらに、当年度は、大規模計算を可能とするべく、3次元静電粒子シミュレーションコードに新しいポアソンソルバーを実装する作業など、コードの開発も同時に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、核融合プラズマをはじめとする様々なプラズマ中で生起する多階層現象について、連結階層アルゴリズムを用いたシミュレーションコードを開発し、それによる自己無撞着なシミュレーションを実現させることにあるが、研究初年度である平成23年度は、当初計画において、連結階層コードの実現へ向けたアプローチとしての微視的な物理の観点に基づくコードの開発、及び、それによる現象に関する研究を進める段階と位置づけていた。研究実績の概要にも示したように、当年度におけるこれらの研究計画は、ほぼ予定通りに実施されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題では、主に、3つの研究対象を考えているが、そのそれぞれについて、今後、以下のように推進する予定である。 (1)磁場閉じ込め装置周辺部におけるプラズマ輸送:当年度の検討作業の結果にもとづいて、微視的モデルコードと巨視的モデルに基づくコードを連結したコードの開発を進める(巨視的モデルの開発も含む)。また、微視的モデルコードの大規模化、最適化の作業も、継続して実施する。 (2)電磁波や粒子ビームによるプラズマ加熱:磁場閉じ込め核融合プラズマでは、その加熱や電流駆動のために、電磁波(イオンサイクロトロン波、電子サイクロトロン波など)や中性粒子ビームが用いられる。この加熱過程では、もちろん、波動や粒子ビームと核融合プラズマ粒子との間のミクロな相互作用が重要となる。核融合プラズマの挙動を調べるためには、このようなミクロ過程と核融合プラズマ全体の挙動との間の連関をあきらかにすることが必要不可欠である。次年度以降、このようなプラズマ加熱過程への連結モデルの適用について調査・検討をおこなう。 (3)オーロラシミュレーションの高精度化:既存のオーロラ連結シミュレーションコードでは、粒子モデルとして1次元静電粒子コードを用いているため、取り扱える粒子運動は磁力線方向に限られており、電流の局所的な空間分布を反映させられない。一方、流体モデル側のコードでは、境界条件として、毎ステップ、ポアソン方程式を解く必要があるため、容易にグリッド数を増やすことができない。次年度以降は、当該のオーロラシミュレーションコードに、当年度に開発した粒子コードを実装し、また、当年度に得られた知見を生かしながら流体モデル側コードのポアソン方程式ソルバーの改良を進め、より高精度な計算が可能となるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当年度、物品費を用いて、データ解析及びストレージ用サーバを導入する予定であったが、当年度は、既存のコードによる小規模計算と大規模計算を目指したコード開発に重点を置いたため、当該サーバの導入を延期した。次年度は、当年度に開発した大規模計算用コードを用いたシミュレーションを実施する予定であるので、そのデータの解析、及び、保存をするためのサーバを、当年度分と次年度分を合わせた物品費により導入する。
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