2012 Fiscal Year Research-status Report
連結階層シミュレーションモデルで拓く核融合プラズマ研究の新展開
Project/Area Number |
23740411
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
長谷川 裕記 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60390639)
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Keywords | プラズマ・核融合 / 計算物理 / ハイパフォーマンス・コンピューティング / 磁気圏・電離圏 / 自己組織化 |
Research Abstract |
本課題では、核融合プラズマをはじめとする様々なプラズマ中で生起する多階層現象について、連結階層アルゴリズムを用いたシミュレーションコードを開発し、それによる自己無撞着なシミュレーションを実現させ、いままで解明されてこなかったそのダイナミクスについて、新しい知見を獲得することをめざしている。特に、①磁場閉じ込め装置周辺部におけるプラズマ輸送、②電磁波や粒子ビームによるプラズマ加熱、③オーロラシミュレーションの高精度化などを対象として研究を進めている。平成24年度は、前年度に引き続き、①磁場閉じ込め装置周辺部におけるプラズマ輸送を中心に研究を進めた。平成23年度に引き続き、3次元静電粒子シミュレーションコードを用いて、微視的な物理の観点から、周辺部におけるプラズマコヒーレント構造(ブロブ)の挙動について調べたところ、ブロブの内部に自発的な電流系が形成されることを観測した。これは理論的に予想されているものと矛盾のない結果であり、自己無撞着な計算によって、その存在を確認することができた。また、ブロブが粒子吸収境界(ダイバータ板に相当)に接している場合と接していない場合(周期的境界条件の場合)、それぞれのブロブの伝播速度を比較したところ、粒子吸収境界に接している場合には、接していない場合と比べ、伝播速度が遅くなることを観測した。この結果は、ダイバータ接触プラズマとダイバータ非接触プラズマにおける実験結果を、定性的に説明できる可能性がある。これらの成果については、第54回アメリカ物理学会プラズマ分科会などにおいて報告した。さらに、当年度は、大規模計算を可能とするべく、3次元静電粒子シミュレーションコードに実装した新しいポアソンソルバーを分散並列化する作業など、コードの開発も並行しておこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、核融合プラズマをはじめとする様々なプラズマ中で生起する多階層現象について、連結階層アルゴリズムを用いたシミュレーションコードを開発し、それによる自己無撞着なシミュレーションを実現させることにあるが、研究二年目である平成24年度は、当初計画において、連結階層コードの実現へ向けたアプローチとしての微視的な物理の観点に基づくコードの開発、及び、それによる現象に関する研究を進め、過去の流体(マクロ)モデルとの比較をおこない、連結モデル構築の検討などをおこなう段階と位置づけていた。研究実績の概要にも示したように、当年度は、粒子コードによる現象の微視的物理に関する研究を進め、過去の巨視的モデルに基づく研究との比較をおこない、当初の研究計画を、ほぼ予定通り、実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題では、主に、3つの研究対象を考えているが、そのそれぞれについて、今後、以下のように推進する予定である。 ①磁場閉じ込め装置周辺部におけるプラズマ輸送:微視的モデルコードの大規模化、最適化の作業を継続して実施し、大規模システムにおける計算をおこない、現象の解明を目指す。さらに、引き続き、連結モデルの構築について検討を進める。 ②電磁波や粒子ビームによるプラズマ加熱:磁場閉じ込め核融合プラズマでは、その加熱や電流駆動のために、電磁波や中性粒子ビームが用いられるが、これらの過程では、波動や粒子ビームとプラズマ粒子との間のミクロな相互作用が重要となる。そして、このような微視的過程と核融合プラズマ全体の挙動との間の連関をあきらかにするには、連結モデルによる自己無撞着な計算が必要であろう。次年度も引き続き、①磁場閉じ込め装置周辺部におけるプラズマ輸送の研究で得られた知見も参考にしながら、このようなプラズマ加熱過程への連結モデルの適用について調査・検討を進める予定である。 ③オーロラシミュレーションの高精度化:既存のオーロラ連結シミュレーションコードでは、流体モデルコードにおいて、電離圏側の境界条件を与えるために、毎ステップ、ポアソン方程式を解く必要があるため、グリッド数を増やすとその計算コストが多大になる。一方、粒子モデルコードは、1次元の静電粒子コードであるため、電流の局所的な空間分布を反映させられない。次年度以降は、当年度までに得られた知見を参考に、流体モデルコードのポアソン方程式ソルバーの改良を進めていく。また、次々年度以降に、粒子モデルコードの多次元化も進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当年度は、前年度末の予定通り、データ解析用計算機の導入をおこない、旅費についても、ほぼ計画通りに使用したが、少額の次年度使用額が発生した。当該研究費については、次年度請求分の研究費(物品費)と合わせて、可視化用計算機の導入に充てる予定である。また、旅費については、成果発表、及び、研究課題に関する情報収集のため、国内出張1件、外国出張1件での使用を予定している。
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