2011 Fiscal Year Research-status Report
磁場閉じ込め高温プラズマを利用した高Z多価イオンの極端紫外スペクトルの研究
Project/Area Number |
23740412
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
鈴木 千尋 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30321615)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / 原子・分子物理 / 光源技術 / 国際情報交流(アイルランド) |
Research Abstract |
本研究では、短波長光源開発への応用や、核融合プラズマ中の不純物挙動の理解を念頭に、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)で生成される光学的に薄い高温プラズマを光源として、現状では未解明の部分が多い、高原子番号(高Z)多価イオンからの極端紫外(EUV)スペクトルを観測し、理論計算や他の基礎実験との比較検討を行うことで、発光機構や原子番号・電子温度依存性の理解を深めることを目的とする。 平成23年度は、ソフトウェア・制御用PC・データ収集機器を導入して、実験の効率化を図るとともに、ペレット入射装置を用いてタングステン・ガドリニウム・ネオジムの3種類の元素をLHDプラズマ中に入射し、斜入射型真空紫外分光器を用いてEUVスペクトルを観測した。過去のデータを参照し、観測波長域は、タングステンについては5nm付近と18nm付近、ガドリニウム・ネオジムについては7-8nm付近に設定した。加熱パワーを制御して放電中に電子温度を変化させることで、イオンの価数分布が変化し、スペクトルの様相が大きく変化することが確認され、現在解析を進めている。1keV程度の電子温度では、4p-4d遷移による疑似連続的なスペクトルが観測され、Zの増加とともに短波長側に移動する傾向が確認された。さらに電子温度が高い場合には、銅様などの高価数イオンからの離散的なスペクトル線が同定された。 電子温度1keV以下において、18nm付近に観測されるタングステンの疑似連続的なスペクトルについては、海外研究協力者によるCowanコード計算結果と比較し、比較的低価数のイオンからのn=5-5遷移による発光であると結論された。この結果は第17回プラズマ中の原子過程に関する国際会議にて口頭発表するとともに、J. Phys. B誌に投稿論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ペレット入射によるLHDプラズマへの高Z不純物の入射とEUVスペクトルの観測については、およそ計画通りに実行することができた。合わせて、電子温度の低い周辺領域に直接不純物を導入するため、レーザーブローオフ装置を用いた不純物の導入を計画していたが、準備不足のため本年度は実施できなかった。理論計算については、タングステンの計算結果は充実してきており、実験との比較も進んでいるが、ガドリニウム・ネオジムといった希土類元素のエネルギー準位の計算が、当初計画よりも若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
EUVスペクトルの原子番号依存性をより詳細に明らかにするために、計測対象をZの異なるランタノイド系周辺の他の元素にも広げる予定である。すでに候補となる材料の準備を進めつつある。各元素についてEUVスペクトル観測実験を行うが、観測波長域を広げるとともに、可能であれば高波長分解能の回折格子を入手してより詳細な計測を行なう。また、レーザーブローオフ装置を用いた不純物の導入実験の可能性も検討する。スペクトルの強度比などの詳細な解析を行うために、真空紫外分光器の感度校正が望まれる。このためには共通視線の可視分光系が必要であり、既存分光器を活用して光学系の構築を進める予定である。 引き続き海外研究協力者の協力も得ながら、Cowanコードに加えて、相互比較としてHullacコード等の他の原子構造計算コードによる希土類元素のスペクトルの計算を進める。Hullacコードでは相対論的Dirac方程式を直接解くため、より高い波長精度が期待でき、かつ衝突・輻射モデルの計算も可能である。電離平衡や輸送モデル計算コードも導入し、実験で得られた観測視線上積分のスペクトルを理論モデル計算で再現することを目指す。電子ビームイオントラップや荷電交換衝突分光等の基礎実験装置における実験の進展に合わせて、それらとの比較検討も行う。これらの実験・理論の結果を総合的に解析・検討し、研究成果を国内学会および国際会議において発表するとともに、論文としてまとめて学術論文誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各実験機器のメンテナンスを行ない、必要に応じて真空部品・光学部品を購入する。平成23年度に消耗品費として生じた若干の残額をこの一部に充当する。可能であれば、より高い波長分解能で観測して精度を上げるため、より大きな刻線数の回折格子を購入し、ホルダの製作と調整・据付けを行う計画である。感度校正用可視分光については、分光器は既存のものを流用するが、光学系の構築に必要な部品を購入する。研究成果を国内学会および9月の「多価イオン国際会議」において中間発表するために旅費を使用する。
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Research Products
(2 results)