2012 Fiscal Year Research-status Report
磁場閉じ込め高温プラズマを利用した高Z多価イオンの極端紫外スペクトルの研究
Project/Area Number |
23740412
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
鈴木 千尋 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30321615)
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Keywords | プラズマ・核融合 / 原子・分子物理 / 光源技術 / 国際情報交換(アイルランド) |
Research Abstract |
本研究では、短波長光源開発への応用や、核融合プラズマ中の不純物挙動の理解を念頭に、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)で生成される光学的に薄い高温プラズマを光源として、現状では未解明の部分が多い、高原子番号(高Z)多価イオンからの極端紫外(EUV)スペクトルを観測し、理論計算や他の基礎実験との比較検討を行うことで、発光機構や原子番号・電子温度依存性の理解を深めることを目的とする。 平成24年度は、昨年度に観測された、ガドリニウム・ネオジムからの7-8 nm付近のEUVスペクトルの電子温度依存性の解析を進め、電子温度が高い場合に観測される離散的なスペクトル線をニッケル様・銅様イオンのラインと同定するとともに、中空型のプラズマが生成され電子温度が300eV以下の低い場合に観測されるスペクトルから、銀様・パラジウム様イオンのラインを同定した。これらの解析結果をJ. Phys. B誌に投稿論文として発表するとともに、これまでのタングステンに関する解析結果と合わせてまとめ、第4回プラズマ中の原子分子過程に関する日中セミナー、および第22回国際土岐コンファレンスにて発表した。 実験では、ペレット入射装置を用いて新たにテルビウム・ジスプロシウム・ビスマスをLHDプラズマ中に入射し、斜入射型真空紫外分光器を用いてEUVスペクトルを観測した。観測波長域は、テルビウム・ジスプロシウムについては、6-7 nm付近、ビスマスについては2-4nm付近とした。前者については放電中の電子温度の変化にともなうスペクトルの様相の変化が確認されたが、後者についてはほとんど変化が見られず、現在解析を進めている。パラメータの異なるプラズマからのスペクトルと比較するため、海外研究協力者との共同によるレーザー生成プラズマ実験結果との比較・検討を行い、第17回多価イオンの物理に関する国際会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペレット入射によるLHDプラズマへの高Z不純物の入射とEUVスペクトルの観測については、計画通りにZの異なるランタノイド系元素に加えて、水の窓用光源開発関連で重要なビスマスの入射実験を試験的に実施することができ、Z依存性に関するデータが拡充された。研究成果のまとめも順調に進み、1編の投稿論文と3件の国際会議発表として報告することができ、また今後も何件かの発表がすでに見込まれている。ただし、レーザーブローオフ装置を用いた周辺領域への不純物の導入計画については 、本年度も未着手のままとなった。理論計算と実験との相互比較の幅を広げるため、CowanコードだけでなくFACコードの導入に着手したが、具体的な結果を出す段階にはまだ至っておらず、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
EUVスペクトルの原子番号依存性の詳細な理解を念頭に置き、新たにこれまでとはZの異なるランタノイド系元素を入射してEUVスペクトルの観測実験を実施する。すでにペレットの材料は購入済であり、実際に計測対象とする元素の検討を行う。水の窓光源への応用を念頭に、引き続き海外研究協力者の協力を得ながら、ビスマスに加えてジルコニウムやゲルマニウムのEUVスペクトルの観測も行う予定である。原子構造計算コードによる理論計算との比較検討のため、Cowanコードに加えて、導入済みの FACコードを計測対象の元素に適用できるように計算環境の整備を進める。最近になって電子ビームイオントラップにおけるランタノイド系元素やビスマスに関する実験が進展して結果が発表され始めており、それらとの比較検討も行って発光機構の理解を深める。将来の研究進展のために必要な実験データをさらに充実させるため、新たに不純物放射の空間分布が測定可能な真空紫外分光システムを設置する計画を進める。これらの実験・理論の結果を総合的に解析・検討し、研究成果を国内学会および国際会議において発表するとともに、論文としてまとめて学術論文誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度である平成25年度は、主に研究成果発表や共同研究のための旅費として使用する予定である。パラメータの異なるプラズマとの比較の観点から、海外研究協力者だけでなく国内のレーザー生成プラズマ関連の研究室との共同研究を展開しており、相互交流のための旅費が必要である。8月の「天体・実験プラズマの原子スペクトルに関する国際会議」において本研究の成果に関する招待講演を行うことが決まっているが、会議側からの旅費の支給は一部にとどまるため不足分に充当する。平成24年度は各実験機器のメンテナンスが予想を下回ったため、まとまった次年度使用額が発生した。この持ち越し額は各実験機器のメンテナンスに必要な真空部品・光学部品を購入するだけでなく、新しい真空紫外分光システムの整備にも充当していく予定である。
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Research Products
(4 results)