2013 Fiscal Year Annual Research Report
超短レーザー誘起非断熱電子ダイナミクスを利用した芳香族分子の運動制御理論の開発
Project/Area Number |
23750003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅野 学 東北大学, 理学研究科, 助教 (30598090)
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Keywords | 超短レーザーパルス / 偏光 / π電子系 / 環電流 / 非断熱ダイナミクス / 波束動力学計算 / 国際情報交換 / 台湾 |
Research Abstract |
レーザーの高強度・短パルス化に伴い、アト秒から数フェムト秒のパルス長を持つレーザーパルスを用いた超短時間領域での分子内電子ダイナミクス制御が期待されている。我々はこれまでに、キラル芳香族分子の光誘起π電子回転と分子振動の非断熱結合を数値計算によって解析し、分子振動の振幅がπ電子の芳香環に沿った回転方向に依存することを見出していた。これを踏まえて、本研究は、超短レーザーパルスとそれに誘起される電子と原子核の非断熱結合を利用した芳香族分子の運動制御理論の開発を目指すものである。 平成23年度は、光誘起π電子回転と結合してポテンシャル曲面の間を遷移する核波束の干渉機構を簡単な1次元モデルを用いて理論解析し、核波束の干渉効果(建設的か相殺的か)が直線偏光レーザーの偏光方向によって決定されることを示した。また、円偏光や楕円偏光までも包括した任意の偏光を持つレーザーを扱える形式に理論を拡張し、π電子回転が生成する角運動量を一般的に定式化することに成功した。 平成24年度は、光誘起π電子回転と結合する核波束の干渉効果を任意の偏光によって調整し、分子振動の振幅を自在に制御できることを理論解析と数値計算によって明らかにした。また、芳香族分子の振動スペクトルを理論計算し、ピーク強度が顕著な偏光依存性を示すことを見出した。超短レーザーパルスを用いた新規かつ高速な分子キラリティー同定法の基礎となる成果である。 平成25年度は、芳香族分子の非断熱動力学理論を3次元π共役系であるフラーレンに適用することを試みた。近年の実験からフラーレンのイオン化や解離のパターンがレーザーの偏光に著しく依存することが知られている。任意の偏光によるフラーレンの電子遷移を記述できる逆ピラミッド型モデルを2光子遷移に適用し、イオン化の偏光依存性を決める主要な因子は電子状態間の電気遷移双極子モーメントの大きさであることを示した。
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Research Products
(2 results)