2011 Fiscal Year Research-status Report
分子シミュレーションによる膜タンパク質の分子透過性に関する理論的研究
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23750008
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
齋藤 大明 金沢大学, 数物科学系, 助教 (40506820)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 分子動力学法 / 脂質二重層膜 / イオンチャネル / グラミシジン |
Research Abstract |
生体膜は脂質分子の種類やその混合割合によって,膜内流動性やパッキング特性が大きく変わり,これにより膜タンパク質の構造特性や膜内安定性,イオン透過性も大きく変化することが知られている.すなわち,膜タンパク質は最適な膜溶媒環境下においてその特性を最大化させる「膜溶媒選択性」を有している.本研究では,様々な脂質膜環境におけるグラミシジンAおよび脂質二重層膜の動的構造の解析,グラミシジンの膜内安定性の評価を分子動力学シミュレーション計算により評価した。膜環境の変化に対するこれらの特性の系統的変化を定量的に評価し,生体内における膜タンパク質の脂質膜選択性やイオン・分子透過機構を明らかにした.本研究では4種類の長さの違う脂質分子(DLPC, DMPC, DPPC, DSPC)を用い、これら脂質分子で構成される脂質二重層膜へグラミシジンAを添加させ、MDシミュレーションを実行した. 解析の結果,全ての系においてグラミシジン添加により膜面積は減少し,膜厚と疎水鎖領域の厚さは増加する結果が示された.これは脂質分子のオーダーパラメータ増加やゴーシュ構造の減少による,アシル鎖の膜厚方向性の増加が原因と考えられ,実験結果との良い一致が示された. これはグラミシジンと周辺の疎水鎖領域の厚さの大きさのミスマッチングにより生じるものであり,DSPC/GA膜の平衡状態におけるスナップショット構造ではDSPC膜の膜厚はグラミシジンAの疎水鎖領域の厚さよりも十分大きいために,グラミシジンA周辺の膜厚に大きなゆがみが生じていることが示された.逆にDMPC膜ではグラミシジンの疎水性コア領域とのマッチングが良く、グラミシジン添加による膜厚のゆがみはほとんど生じない結果が示された.これらの事から,グラミシジンはDMPC膜において十分な安定が得られている事が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はグラミシジン/脂質二重層膜の系での1.構造解析, 2.分子透過性, 3. 膜内安定性評価としており、本年度は目的1.が十分達成されている。これらの研究結果も学術論文としてすでに出版されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はグラミシジンのイオンチャネルでのイオン透過性評価と、グラミシジンの膜内安定性の評価を自由エネルギー計算により評価する。これらの研究遂行には、十分な文献調査や高精度の自由エネルギー計算を実行するための計算プログラムの準備・開発が重要となる。実際のアプリケーションの前に十分な検証計算を行いつつ、これらの研究課題を遂行していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は研究によって得られた成果を積極的に報告するために、国内・国外の学会に多数参加する予定である。国内では分子科学会、生物物理年会、Slow Dynamics、分子シミュレーション討論会に参加予定である。国外では2月でアメリカで開かれるSanibel Symposiumに参加予定である。国内旅費として20万円、国外旅費として30万円を予定している。
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Research Products
(31 results)