2011 Fiscal Year Research-status Report
光電子分光による電極界面の局所環境計測:溶媒和したレドックス活性種の電子状態評価
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23750013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横田 泰之 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00455370)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 表面・界面 |
Research Abstract |
近年、精密に設計された効率的な電池の開発といった観点から、溶液/電極界面の分子レベルの理解が急務となっている。申請者は、電気化学環境下における原子・分子の局所環境を明らかにし、生体内の電子移動反応と同レベルで精密設計された機能デバイスの構築を目指している。例えば色素増感太陽電池では、電解質/色素/半導体という複雑な界面において精密なエネルギー準位接続が求められているが、色素のエネルギーとしてHOMO準位と酸化還元電位が曖昧に用いられているため、これらを包括できる実験的・理論的枠組みの構築が必要不可欠となっている。本研究では、真空中で電解質/レドックス活性種/金属界面を構築し、光電子分光を用いて0.1 eV以下の精度でHOMO準位と酸化還元電位の相関関係を明らかにする。本研究の特色は、溶媒和したレドックス活性種の電子状態を評価することで、電極上での酸化還元反応の本質を明らかにする点にある。 平成23年度は、電子移動反応のモデルとして用いられるRedox活性分子(フェロセン)で修飾された電極と、極めて蒸気圧が低いイオン液体を用いることで、測定に最適な試料を作製し実際に光電子分光測定を行った。フェロセン誘導体自己組織化単分子膜(SAM)にスピンコート法でイオン液体(BMIM-TFSI)を吸着させ、原子間力顕微鏡で膜構造を評価した。膜作製法を工夫することで、光電子分光測定に最適な膜厚を有するイオン液体/フェロセンSAM/金電極系を準備することに成功した。作製した試料の光電子分光測定を行い、HOMO由来のピーク位置から、フェロセン骨格周辺の局所構造を推測することに成功した。三種類のフェロセン誘導体を用いて比較検討することで酸化還元電位とHOMO準位の間に相関関係があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、精密なイオン液体薄膜作製法の確立が律速になると予想していたが、スピンコート法を用いることで比較的容易に目的の試料を作製することに成功した。そのため、実際に光電子分光測定を開始する時期が大幅に前倒しすることができた。さらに、当初平成24年度に予定していた新規分子の合成についてもほぼ完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に基づき、今後も光電子分光測定を行う。研究実施計画では、HOMO準位と酸化還元電位の相関が得られた場合と得られなかった場合の二通りを考えていたが、上で述べた結果から前者に沿って研究を行う。特に、イオン液体の陰イオンを変えた場合、フェロセン誘導体のアルキル鎖長を変えた場合の実験を重点的に行う。また、これらの実験と並行して量子化学計算を行い、実験結果のサポートを行っていく予定である。また、イオン液体薄膜作製法の確立が予想以上に速やかに完了したため、平成23年度は研究費の使用額が予定を下回った。そこで平成24年度は、本来想定していなかった実験にも積極的に取り組んでいく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き、フェロセン誘導体SAMの作製のための金基板が1年あたり100枚程度必要となる。また、原子間力顕微鏡測定用カンチレバーと様々なチオール誘導体及びイオン液体は、本研究で一貫して使用する。旅費として、国内学会2回、国際学会1回、他に研究打合わせを想定している。その他は、論文投稿料、英文校閲費等である。
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Research Products
(8 results)