2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23750015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 操 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10464257)
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Keywords | 共鳴ラマン分光法 / 時間分解分光法 / 微生物型ロドプシン / 光異性化 / イオン輸送 / タンパク質ダイナミクス |
Research Abstract |
平成25年度は、時間分解共鳴ラマン分光法により、塩化物イオンポンプであるハロロドプシン(HR)の光サイクル反応における構造変化の過程を観測した。 ピコ秒時間分解紫外共鳴ラマン分光法により、HR中のレチナール発色団の光異性化に連動したタンパク質の初期応答速度は、本課題でこれまで研究を行ってきた他の微生物型ロドプシンであるバクテリオロドプシンやセンサリーロドプシンとほぼ同様であることがわかり、微生物型ロドプシンに特徴づけられる過程を観測した。ナノ秒からミリ秒の時間領域で、時間分解可視共鳴ラマン分光法によるHRのレチナール発色団の構造変化の過程を光反応の段階ごとに観測した。とくに、ポンプされる塩化物イオンの分子内移動を駆動するレチナール発色団の構造変化の過程をリアルタイムでとらえることに成功した。 HRは、発色団近傍にある塩化物イオン結合サイトにさまざまなアニオンを結合できることが知られている。レチナール発色団はアニオンと相互作用し、光が照射されていない状態においても、その電子状態が影響を受ける。時間分解共鳴ラマン分光法をもちいた観測により、ピコ秒で起こるレチナールの異性化に対するタンパク質応答は、アニオンの影響を受けないことがわかった。しかし、ナノ秒以降で起こるアニオンの分子内移動の過程において、中間体の生成速度、光サイクル反応にアニオンの種類による違いが現れることを明らかにした。 以上の成果を、現在、論文にまとめている。また、本研究課題で行ったこれまでの研究内容を含む招待講演を5件行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に取得した産後および育児休暇による研究推進の遅れを取り戻し、研究計画に含んだ好塩菌に見られるものと同種の機能を持つ4種の微生物型ロドプシンの初期タンパク質ダイナミクスについて知見を得ることができた。また、それ以外の微生物型ロドプシンのタンパク質ダイナミクス観測にも成功し、種を通じた系統的なダイナミクス観測から、微生物型ロドプシンの特徴的なタンパク質応答を見出すことができた。 さらに当初の研究計画に含んでいなかったが、タンパク質ダイナミクスと機能発現の関連を調べるには、レチナール発色団の光異性化に連動した初期タンパク質応答を追うだけでは不十分であるため、ハロロドプシン(HR)のイオン輸送に伴う発色団構造変化の段階的変化をとらえる研究も推進できた。
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Strategy for Future Research Activity |
時間分解共鳴ラマン分光法をもちいた微生物型ロドプシンの構造ダイナミクス観測を行ってきたが、研究期間中にも新種のタンパク質が発見されており、ダイナミクスと機能の相関を得るためには、発色団における構造変化の過程を観測する必要性がある。このため、基礎的な分光データとして、時間分解吸収分光法をもちいて発色団の変化の過程を、時間分解共鳴ラマン分光法をもちいて構造変化の過程を追跡し、相補的にタンパク質ダイナミクスを明らかにする。分光データをもとに機能との相関を見出し、機能発現の仕組みの解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度前半に産後・育児休暇を取得したため、初年度の研究が遅延気味であった。また、時間分解共鳴ラマン分光法による構造ダイナミクス観測のほかに、当初の研究計画にはなかった時間分解吸収分光法による微生物型ロドプシンの光反応中間体の詳細な寿命決定を行う必要が生じた。測定システムを新たに製作するための機器や光学部品の調達に時間がかかり、予定していた試料調製および測定実験を遂行することができなかった。 測定にもちいるタンパク質試料の調製(大腸菌による培養・精製・可溶化)に必要な試薬・器具の購入、分光測定に必要な光学部品の購入(劣化品の交換を含む)に使用する。また平成26年8月に開催される国際会議(ICORS2014、ドイツ・イェーナ)で本研究により得られた研究成果を報告するための海外旅費に使用する。
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Research Products
(10 results)