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2011 Fiscal Year Research-status Report

温度とサイズを規定した帯電液滴中での生体関連分子の構造と反応性の研究

Research Project

Project/Area Number 23750021
Research InstitutionOsaka Prefecture University

Principal Investigator

藤原 亮正  大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10580334)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywordsイオントラップ / クラスター / 温度制御 / スプレーイオン化 / 微小液滴
Research Abstract

揺らぎの化学反応に果たす役割を理解することを目的として、生体関連分子を含む帯電液滴の精密温度制御技術を確立し、温度とサイズを規定した微小液滴を反応場とする分光計測法の開発を進めている。今年度は、スプレーイオン化法を応用した帯電液滴生成源と減速用イオン光学系を備えた温度可変イオントラップを設計・製作し、反射型飛行時間質量分析計とナノ秒レーザーを組み合わせた光解離分光装置の開発を進めている。 温度可変イオントラップのRF電場によるポテンシャルに歪が生じると、イオンが加熱され、温度制御の精度が低下する。本研究では、RFロッドを一体成型し、トラップセルを削り出して製作することで、気相イオンの精密温度制御を実現する。静電レンズによる電位勾配と冷却したヘリウムガスの圧力勾配を利用したイオン光学系を開発し、帯電液滴をソフトに減速しながら収束してトラップに導入することを可能にした。インピーダンス整合不要のプッシュプル型高出力RF電源を製作し、広範な温度変化とGM冷凍機の振動に対する安定性を飛躍的に向上させた。 スプレーイオン化法に基づいた金属-ペプチド錯体イオン生成源を試作し、既存の二重収束型質量分析装置を用いて構造と解離反応を検討した。衝突誘起解離と電子移動解離、量子化学計算の結果から、アルカリ金属―トリプトファン錯体1価イオンの構造は両性イオン型ではなく、金属イオンに中性トリプトファンが付加した構造をとることが明らかになった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

自動車用燃料噴射バルブによるパルス超音速ジェットが開発(1979年)されて以来、レーザーと分光法の発展に伴って、サイズを変数とした気相クラスターの研究が広範に展開されている。気相クラスター研究が始まってから30年以上経つが、温度に関する情報は実験的な困難さからほとんど得られておらず、ドイツのグループによる相互作用の強いナトリウムクラスターの融点測定に留まっている。現在でも不特定な温度による異性体分布の違いが議論に大きな混乱を招いており、気相クラスターの温度は制御出来ないという認識さえ生じている。相転移や構造・反応ゆらぎを分子レベルで理解するためには、温度を変数とした気相クラスターの実験的研究が必須である。 本研究では、温度可変イオントラップを熱浴とした気相クラスターイオンの精密温度制御技術を開発している。RFロッドを一体成型し、トラップセルを削り出して製作することで、歪のないポテンシャル中でのバッファーガス冷却を実現し、気相イオンの温度を精密に制御する。また、インピーダンス整合不要のプッシュプル型高出力RF電源を製作し、広範な温度変化とGM冷凍機の振動に対する安定性を飛躍的に向上させた。本研究開発でのイオン化法と精密温度制御技術は非常に幅広い系に適応できることから、温度を規定した実験的研究が決定的に不足している現状を打破し、分子レベルでの理解を目的とする気相クラスターの実験的・理論的研究に大きな発展を導く基礎技術となる。

Strategy for Future Research Activity

これまでに開発したスプレーイオン化法を応用した帯電液滴生成源と減速用イオン光学系を備えた温度可変イオントラップを組み込み、反射型飛行時間質量分析計とナノ秒レーザーを組み合わせた光解離分光装置を開発する。大気圧下で生成した帯電液滴を超高真空中に効率良く導入するため、7段の差動排気型真空チャンバーを製作する。パルスレーザーとイオントラップを用いる本計測法では、フェムト秒から数十分に及ぶ広い時間スケールで構造・反応解析が可能であり、揺らぎの中での化学反応機構を分子レベルで解析できる。 ペプチドとプロトンを含む液滴のサイズ選別比熱・融点測定から、液滴サイズに依存した相転移と水素結合ネットワーク構造の関係を検討し、分子動力学計算との比較から、液滴中でのペプチドの二次構造と水和構造、水素結合ネットワーク構造の関係を分子レベルで明らかにする。融点付近における液滴の構造揺らぎと相転移に伴う、ペプチドの励起状態電子移動/水素原子移動の反応性の変化を紫外光解離分光によって調べ、水和構造との関係を明らかにする。以上の結果を基に、温度とサイズを規定した液滴を反応場として水和ヒドロニウムラジカルを生成し、分光測定から反応特性を解明する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

開発した帯電液滴生成源と温度可変イオントラップ備えた光解離分光装置を製作する。大気圧下でイオンを生成し、超高真空中に効率良く導入するため、7段の差動排気型真空チャンバーとイオン光学系を製作する。生体関連分子を含む帯電液滴の光解離スペクトルを、温度とサイズを変数として系統的に測定するため、温度制御や波長可変、データ収録、解析システムを構築する。ペプチドの配列や残基数、液滴の温度、水和構造に依存した二次構造を系統的に調べる目的で、各種ペプチド試薬を購入、合成しながら測定を行う。

  • Research Products

    (3 results)

All 2011

All Presentation (3 results)

  • [Presentation] 質量選別機能を備えた気相イオンNMR分光法の開発2011

    • Author(s)
      戸名正秀、石川春樹、藤原亮正、櫻井誠、冨宅喜代一
    • Organizer
      第5回分子科学討論会
    • Place of Presentation
      札幌
    • Year and Date
      2011 – 922
  • [Presentation] 質量分析機能を備えた気相核磁気共鳴装置の開発2011

    • Author(s)
      冨宅喜代一、戸名正英、藤原亮正、櫻井誠、石川春樹
    • Organizer
      第59回質量分析総合討論会
    • Place of Presentation
      大阪
    • Year and Date
      2011 – 913
  • [Presentation] Photodissociation Spectroscopy of Ca+-H2O in the Temperature-Variable Ion Trap2011

    • Author(s)
      Haruki Ishikawa, Toru Eguchi, Takumi Nakano, Akimasa Fujihara, Kiyokazu Fuke
    • Organizer
      66th Ohio State University International Symposium on Molecular Spectroscopy
    • Place of Presentation
      Columbus, Ohio, USA
    • Year and Date
      2011 – 620

URL: 

Published: 2013-07-10  

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