2013 Fiscal Year Annual Research Report
温度とサイズを規定した帯電液滴中での生体関連分子の構造と反応性の研究
Project/Area Number |
23750021
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
藤原 亮正 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10580334)
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Keywords | 光解離 / アミノ酸 / 光学異性体 / キラル認識 / ホモキラリティー |
Research Abstract |
地球上生物は一部の例外を除きL-アミノ酸から蛋白質が構成される。近年、隕石からL体過剰のアミノ酸が検出されたことから、光学異性体比の偏りの起源が地球外である仮説が示された。その要因には円偏光説等様々な可能性が考えられているが、どの説も十分には検証されていない。本研究ではキラルな反応場における光分解反応に注目し、アミノ酸光学異性体分離用カラムとして使用されるキラルクラウンエーテル(+)18C6TAをキラルな反応場のモデルとして、温度制御したプロトン化トリプトファン(TrpH+)光学異性体の紫外光解離反応を検討した。 温度制御(9-300K)したD-TrpH+(+)18C6TAとL-TrpH+(+)18C6TAの紫外光解離では、キラルクラウンエーテル上での解離生成物としてCO2脱離がL体とD体に共通して観測された。極低温領域のD-TrpH+(+)18C6TAではCa-Cb結合開裂によるNH2CH2COOH脱離が観測された。DFT計算からD体の錯体ではCa-H...O水素結合が形成されることが示され、光学異性体間の反応性の違いにキラル相互作用が関係していることが明らかになった。 温度の上昇に伴ってD体のNH2CH2COOH脱離が抑制され、室温付近ではL体と類似した紫外光解離反応となった。この温度依存性は、D-TrpH+(+)18C6TAのDFT計算から予測されるL体の錯体に類似した安定構造への異性化を示していると考えられる。以上の結果から、キラルな反応場でのアミノ酸の光分解反応が、宇宙空間における光学異性体比の偏りの一つの可能性であることが実験的に示された。
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